HOUSTO編集部が「今、気になる本」をシェアするストレージレビュー。今回ご紹介するのはロンドン在住イメージコンサルタントによる、英国流の住まいのつくり方を記した本です。
アンティーク(古いもの)に価値を見出すのがイギリスらしさ

インテリアには、根強い人気の北欧風やミッドセンチュリー、最近ではジャパンディ(日本と北欧のミックス)などと、さまざまな国の多様なスタイルがあります。
みなさんは英国流、と聞くと何を思い浮かべますか? 『くまのパディントン』や『ピーターラビット』のような世界観でしょうか。私自身、興味がありつつも具体的なイメージが湧きづらかったので、『英国流「自分に似合う」住まいの作り方』という本を手に取ってみました。
著者であるテート小畠利子さんは、イギリス・ロンドンに移住して30年。イメージコンサルタントとして、その人に似合う色やファッションを見つけるサポートをしています。本書では、イギリスに暮らす人たちの住まいに対する考え方、日本で英国流の住まいをどのように取り入れればよいかなどが詳しく書かれています。
本書を読み進めるうち、英国流の住まいの作り方とは「時間をかけ、手間をかけて家をアンティークに仕上げていく」ことだということが分かってきました。
「英国には、『古いから捨てる』ではなく、『古いからこそ価値を見出す』という文化があるのです」
テートさんもこのように説明しています。
建物も家具も、100年経てば本物のアンティーク。日本にも古道具ファンはたくさんいますが、家づくりでは一般的に新築や最新設備が好まれるもの。古い家を購入し、DIYで自分らしさを加えながら愛着を高めていくのが一般的なイギリスとは、住まいに対する考え方が根本的に違うようです。
自宅で、自分でできる!「イメージコンサル」で居心地のいい部屋をつくるには?
住まいをどのように自分らしく整えていくか、本書ではイメージコンサルティングの手法をもとに解説されています。テートさんによれば、最も大事なのはどんなことやモノに自分のテンションが上がるのかを知ること。心から感動できる、「Wow!」という感情に気づくことだと言います。
これだけ聞くと難しそうな気がしますが、本書では自分の好みに気づくためのワークを用意。自分が心地いいと感じるものの量を知る、パーソナルカラーで似合う色を知るなど、全部で11ステップあります。それらをひとつずつクリアすることで、イメージがだんだん具体化していくはずです。
「読者に優しい本だなぁ」と感動したのは、そのワークの中で記されているインテリア実例写真が英国流に限定されていないこと。テートさんの自邸をはじめ英国流の住まいのヒントになる写真はもちろんたくさん掲載されています。でも「英国流もいいけれど、私はこっちのアジアンな雰囲気も好きかも?」などと、心と向き合ううちに自分の嗜好に気づく読者もきっといる。イメージコンサルタントとして、そうした迷える読者も含めてていねいに導こうとしていることが行間から伝わってきます。
正解はひとつではないし、スタイルに縛られる必要もありません。そして、ずっと同じ好みを貫かなければならないわけでもない。住まいを整えることは、自分自身を知ることです。その考え方や嗜好を住まいに反映させていけばいいのです。インテリアにこだわる方や片づけのプロを数多く取材してきた経験から、私自身もそのことを強く実感しています。
ドア周りやクッション、トイレ。小さな工夫なら、賃貸でも気軽に取り入れられそう
心が躍る「Wow!」を明確にしたら、いよいよ実践。
「大枚をはたいても、必ずしも自分らしい空間が手に入るわけではない」
と、テートさんは小さな工夫をたくさん披露してくれています。家の建て替えや引越しよりも低予算でできるのが建具の交換。それが難しい場合でも、ドアノブや引き出しの取っ手を好みのデザインに変えることは場合によっては賃貸物件でも可能です。
他にも、手持ちの家具や生活用品の使い方をアレンジして、英国流インテリアに近づける方法も教えてくれています。今は剥がせるタイプの壁紙やフロアタイルも豊富に出回っていますよね。大がかりなリフォームを考える前にぜひ試してみたいところです。
読み終えたらすぐ、住まいに手を入れたくなる。そしてイギリスを実際に訪れてみたいという気持ちも盛り上がる! そんな誘惑の多い本だと言えそうです。
書籍情報

英国流「自分に似合う」住まいの作り方
テート小畠利子 著
大和出版
https://daiwashuppan.com/book/b10107310.html