HOUSTO編集部が「今、気になる本」をシェアするストレージレビュー。今回ご紹介する本は、『無理をせず、無駄を楽しむ センスのはなし』。インテリアや収納だけではない、暮らし全体のセンスについて考えていきます。

HOUSTO 編集部

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第一線で活躍し続けるプロダクトデザイナーは、暮らしをどのように整えているのか

『無理をせず、無駄を楽しむ センスのはなし』の著者は、秋田道夫さん。ケンウッド、ソニーを経て独立し、現在も第一線で活躍し続けているプロダクトデザイナーです。

常にデザインと日々向き合っている秋田さんが自身の生活の中で何を大事にしているのか。気になりますよね。本書では、人付き合いや言葉の発信といった目に見えない考え方の部分と、部屋の整え方、ファッションなど視覚的な部分の両面から、秋田さんのこだわりが取り上げられています。

センスは磨くものではなく、暮らしの中に自然とにじみ出てくるもの

秋田さんによれば、これらは端的に言うと暮らしのセンス。ひいては生き方のセンスだと言えます。デザインやセンスという抽象的な言葉を説明するのは難しいもの。でも、秋田さんは本書の中でこう述べています。

センスは「ある・なし」で選別されるものではなく、「磨く」対象となるような堅苦しいものでもなく、だれもが自分のものとしてたのしめるものであるはずです。

そう、センスは各々の日常に紐づいているというのが秋田さんの考え。

私の思う「センス」とは、自分を心地よく整える作法や工夫です。センスについて考えると、日常の何気ないことにも、機微と気づかいが生まれます。

2章ではワンルームの仕事場が詳しく紹介されています。コンセプトは「ほどよい居心地」。まさに秋田さんのセンスがぎゅっと詰まった空間です。秋田さんの感性にフィットする家具や道具を配置していますが、訪れた仕事関係者がどう感じるか、何が視界に入るかということも念頭に置いて整えられています。

3章で語られるファッションも同じ。秋田さんは自分自身を世の中の風景だととらえ、そこにどう映るかを意識していることがよく分かります。

暮らしの中に、無駄を楽しむ「ゆとり」を持ちたい

自分のセンスを形づくるものは一体なんなのか、それを知るには、自分自身のことを深く見つめる過程が必須です。センスは「余計なことをしないこと」だとも言えると秋田さん。何が好きで、何が必要なのか。それは遊びや無駄を通して気づくこともあるかもしれません。

秋田さんは毎月決まった額を「無駄遣いをしていいお金」として確保しているそうです。失敗してもいい、結果的に無駄になってもいいという予算があれば、インテリアもファッションも積極的にチャレンジできます。失敗しても、このためのお金だから問題なし。むしろ、その失敗がセンスの糧として後々の暮らしに生かされるのです。

じつは、本書を通して私が「早速取り入れよう」と真っ先に思ったのがこの習慣でした。あらゆる情報が無限に飛び交う現代社会では、何かを買うときや経験するときは、情報を得ることで失敗を避けようと無意識に行動しているかもしれません。秋田さんの言う「無駄遣いしてもいい」ゆとりが心の中にあれば、自分なりのセンスが少しずつ暮らしににじみ出てくるはず。そんな気がしたのです。

暮らしは自分だけのものだけれど、他人への気遣いがあれば部屋や服装はきっと変わる

センスを知るための回り道を経験し、何かを「いいな」と思う自分の心を育てていく。そして客観的な気遣いも忘れない。そのバランスをどうとるかは難しいけれど、センスを語るうえで避けて通れない道なのかもしれません。

それでも、この本を読み終えた後は、モノの選び方に大きな変化が生まれるはずです。誰かの真似をするのではなく、自分の感覚を信じ、少しの無駄や遊び心を取り入れながら暮らしを整える。そうすることで、あなただけの「心地よい暮らし」が自然と形づくられていくでしょう。

この本を手にとって、あなたらしい一歩を踏み出してみてください。

書籍情報

無理をせず、無駄を楽しむ センスのはなし
秋田道夫著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-3124-8

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