HOUSTO編集部が「今、気になる本」をシェアするストレージレビュー。今回は衣食住のあれこれをYouTubeで公開している深尾双葉さんの著書『ほんとうの豊さに出合うための9週間 部屋と心が自然に整う“一生もの”の暮らし』をピックアップ。著者インタビューを交えてお届けします。

HOUSTO 編集部

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能登半島地震で割れた器。モノを所有する意味を改めて自分に問い直した

約6年前からvlog投稿を始めた深尾さん。器と古道具を扱う店を営んでいた経歴からも分かる通り、かつてはモノやファッションが大好きだったと言います。あちこちで買い集めたお気に入りの器や家具に囲まれるに日常を発信していた深尾さんですが、2024年元旦の能登半島地震で被災。幸いにも家は無事で、器などが割れた程度ですみました。でも命や住まいを失った人々がいる中で、「モノを所有することの意味」を深く考えるようになり、生まれて初めてモノに対する興味を失ったそうです。

深尾さんがモノをどう手放し、何を残したのか。本書ではその心の葛藤と、具体的なステップが9週に分けて詳しく綴られています。

目指すのは、自分の美意識で選んだ上質なモノだけに囲まれる「簡素」な暮らし

本書は単なる捨て活の記録でも、ミニマリスト指南本でもありません。深尾さんの言葉は「モノが少なくなった=部屋がスッキリし家事が楽になった」という次元を超えた場所にあります。

特に印象的なのは、第4週の押入れの片付けです。不要なモノを手放した際、深尾さんは便利なプラスチック収納ケースをやめ、白い段ボールとアウトドア用アルミコンテナに交換しました。

整理収納用品が並んでいるより、白い段ボールが並んでいる方が私は美しく感じます。便利だけれど好きではない物を毎日眺めて暮らすのか、ほんの少し不便さを感じても好きな物を眺めて暮らすのか。私は後者を優先させました。

「実は片付けの資格を取ろうと学んだ時期もありました。でも、私は整理整頓をしたいのではなく、自分が美しいと思うモノを家で眺めたかっただけなのだと気づいたんです。モノを捨てたり効率よく整理するのではなく、今の私にとって大事だと思うモノだけを残す。そうして丁寧に吟味された美しいモノだけに囲まれているのなら、少しくらい乱雑でも不便でも良い。無理して片付けなくても良いのではないかと考えるようになりました」

深尾さんが目指すのは「簡素」な暮らし。無駄は削ぎ落とすけれども、上質さは忘れない。自分が認める価値や美意識で選んだモノだけを慈しむように手元に残すことです。「質素」と似ていますが、質素な暮らしは価値や美意識にこだわらず、最低限のモノがあれば良いという状態。深尾さんの中では大きく異なります。

「SNSなどで発信される、役に立つ暮らしのノウハウに頼るのも確かに便利。でも、暮らしは本来もっと自然体で、人それぞれ楽しむものだと思うんです。整理整頓や片付けに時間をとられるなんてもったいない。道具や空間そのものが持つ美しさ、豊かさに、もっと目を向けていきたいと思っています」

家事はマルチタスクで「こなさない」。五感で味わえば苦にならなくなる

モノが減り、家事にかける時間が減った分、深尾さんは家事を義務ではなく没頭できる楽しみとして捉えるようになりました。

「特に掃除の手間が格段に減り、苦ではなくなりました。本当に気に入っているモノだけが置いてあるから、拭き掃除の際もモノを浮かせる動作さえ楽しく感じるんです。食材の香りや洗濯物の布の風合いに心を寄せる。“ながら家事”をやめ、五感を働かせて一つひとつの動作を味わうようになりました」

深尾さんの記録は物質的なモノから始まり、最後には心の整え方へと進んでいきます。

モノを手放すのは目的ではなく、あくまで「自分だけの心地よさ」に出合うための手段。情報に流されず、自分の美意識で暮らしを再構築したい。そう願うすべての人に、最初の一歩として手に取ってほしい一冊です。

書籍情報

ほんとうの豊さに出合うための9週間 部屋と心が自然に整う“一生もの”の暮らし
深尾双葉 著
KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/322411001013/

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