今回お話を伺ったのは、時間×片付けコンサルタントの下村志保美さん。70代のお母様が実践した実家の片付けの実体験を教えてくれました。

HOUSTO 編集部

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きっかけは父の死。「こどもに迷惑をかけたくない」という思いから、片付けを加速させた母

整理収納やお金まわりなど、暮らし全般のサポートを行っている下村さんは、現在50代。東京に暮らしていますが、昨年愛媛県の実家じまいを経験しました。

「母は父を見送った後、長く実家でひとり暮らしをしていました。介護で大変な思いをし、葬儀や手続きにも苦労したことで“自分の死後、実家の片付けを遠方に住む娘にさせるのは申し訳ない”という思いがあったようです」

実家の片付けは、こどもから促されて親が渋々始めるというケースが多いですが、下村さんの場合は逆。お母様自身が決意し、動き出しています。

「母は几帳面な性格で、片付けられないタイプではありません。でも150平米の田舎の広い家だから収納スペースはたくさんあり、モノは多いほうだったと思います。自分のことは自分で始末したい。娘に迷惑をかけず、自身の手で家じまいをしたい。これは、介護でこどもに下の世話をされるのはイヤだという思いに近いのかもしれませんね」

まずは葬儀場の互助会を利用し、雛人形を供養

葬儀場の互助会に入会していたお母様。会員向けの無料サービスやイベントを利用して、雛人形や写真の供養を行ったそうです。

「思い出のアイテムや思い入れが強いモノ、気軽に捨てられないモノは、後回しにしてしまいがち。でも、母はちょうど良い機会だ、とどんどん先に処分していました。雛人形や写真は、永久に持ち続けることはできません。手放しにくくても、どこかで区切りをつける必要があります。互助会での活動は、母の背中を押す良いきっかけになったと思います」

人形、仏壇など手放しにくいものの処分は、こうした互助会のほかにもさまざまな業者や協会でサービスが提供されています。実家に眠っているなら、一度調べておくといいかもしれません。

手間のかかる大型の収納家具は、少しずつ粗大ゴミに出して処分

次にお母様が手をつけたのは、大型の収納家具です。

「整理収納の考え方では、片付けは引き出しひとつから始めましょうと話すところ。でも母は逆で、先に収納場所をなくしてしまったのです。私にはない発想で驚きました。サイドボードやたんすの引き出しをすべて出し、中身は段ボールに入れて別の部屋にとりあえず保管。時間のあるときに少しずつ整理していきました」

「ただしこれは、収納家具から出したモノを置くスペースがある場合に限り有効です。田舎だからできることかもしれません」

また、お母様の住んでいたエリアでは、年6回まで粗大ゴミを無料回収してくれる制度がありました。ゆっくり時間をかけ、無料引き取りの範囲内で処分できたことは、片付け費用の節約にも大いにつながったそうです。

「捨てたら?」「片付けて」と言うことは一度もなかった

9年ほどかけてモノを減らし、最後はダイニングテーブルや冷蔵庫、洗濯機まで処分してケアハウスに入居したお母様。東京に暮らす下村さんが実家を訪れるのは年1、2回ということもあり、積極的に働きかけたり、片付けを主導したりしたことは一度もありませんでした。

「“これは捨てたら?”“片付けてよ”と言うことなく終わりました。母が自分で動いてくれたということが一番の理由ですが、そうでなかったとしても言わなかったと思います。むしろ、ひとりで重いタンスを動かすのはやめてほしい、食器棚の高い場所に収納している食器を取り出そうとすると危ないよと言い続けてきました。ケガだけはしないでねと。でも、止められると逆にやりたくなってしまうのかもしれません。“今日はこんなモノを捨てた”とよく連絡が来ました」

大事にしていた着物だけは母娘で整理。誰かの役に立つ寄付というかたちで落ち着いた

下村さんは整理収納のプロですが、片付けのアドバイスもしませんでした。でも、着物だけは「思い入れが強くてつらいから、一緒に整理してほしい」と言われたそうです。

「母の嫁入り道具だった着物、私が結婚するときにそろえてくれた着物……。しつけがついたままの着物もたくさんありましたが、母のこれからの暮らしにはほとんど必要ないもの。1着1着一緒に見直し、大半を『着物deお針子』という途上国支援プロジェクトに寄付することにしました」

いくら購入時に高価だったとしても、リサイクルショップに持ち込めば二束三文。価値を否定されているようで傷つくし、かといって、捨てることにも抵抗があります。思い入れの強いモノは、誰かのためになる、何かの役に立つ手放し方なら気持ちの整理がつきやすいということを実感したそうです。

「母が仕立ててくれた私の着物も、もう着る機会はあまりないだろうと分かっていながら、あえて引き取って東京に持ち帰りました。ただし、桐箱に収まる分だけ。今はトランクルームに預けてあります」

片付けは親のペースに合わせて。あれこれ口も手も出しすぎない

あくまで見守り役に徹したことで、お母様が自分のペースで片付けを進めることができたこと。それがスムーズに実家じまいできた最大の理由かもしれません。

「実家がなくなったのは少しさみしいですが、ほぼひとりできれいに整理しきった母には本当に感謝しています。モノを持つ意味、そして快適な暮らしとは何かを改めて考える良いきっかけにもなりました」

片付けサポートや相談も数多く行っているプロ、そして実家じまい経験者、両方の視点を持つ下村さん。後編では、これから実家片付けと向き合う人へアドバイスをいただきます。

今回教えてもらったのは……

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