収納について考えるとき、つい忘れてしまいがちなのが「安全性」への意識。
大事なのはどうしまうかではなく、いかに安全に取り出しやすく使いやすい環境を整えるか。住生活アドバイザー すはらひろこさんに、ものを安全に心地よく使うための収納法を伺います。安心収納のキホンを押さえ収納プランを考えていきましょう。
今回は、住まいの収納の中心となるクローゼット/押し入れの安全性について考えます。毎日身につける衣服をはじめ、寝具、趣味の道具、シーズン毎のレジャーアイテム、旅行用のキャリーケースなど、家中のあらゆるものを大容量収納できるクローゼットと押し入れ。
そのため、ついついスペースいっぱいに詰め込んでしまいがちですが、適正な収納方法を知って、安全で使い勝手のよい空間を手に入れたいものです。ゾーンごとにポイントを意識して危険を避けるとともに、スペースを最大限に活かした使いやすい空間へと変えていきましょう。
ZONE1:衣服をかけるスペース
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押し入れで、市販のハンガーラックを使ってシャツやジャケット、コートなどの衣服をかけて収納するときは、ラックがどれほどの重みに耐えられるのか「耐荷重」を必ず確認します。耐荷重以上の容量をかけると、ポールが歪んだり、ハンガーラック自体が壊れたりすることがあります。
クローゼットの中にあらかじめ備え付けになったハンガーパイプではなく、突っ張り棒を使用して衣類をかけることがありますが、その場合も耐荷重の確認を怠らないように。また突っ張り棒を使用して収納する際、突っ張り棒はクローゼット/押し入れの中の壁の下地があるところにセット。下地のない場所に突っ張ると壁の板が破れてしまうことがあります。
さらに、長さ(幅)が1m以上の突っ張り棒を使用するときは、真ん中に支える支柱を入れて、撓まないように気をつけることが大事です。突っ張り棒は時間の経過とともにゆるんでくるので、定期的に張り具合を調整しましょう。クローゼットを計画する時にも、長さ1m以上のパイプは中間に支柱を入れて、しっかりと固定します。
ZONE2:使用頻度の低いもののスペース
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ものを収納する際は、高い場所に重たいもの、大きなものを置かないことが基本。上段には軽いものを配置するようにし、使用頻度の高いものは、ハンディゾーン*に収納します。ものをぎゅうぎゅうに詰めるのではなく、取り出すときのことを考えて、取り出しやすく安定させる工夫を施しておくと安心です。
押し入れの天袋を収納に活用する場合、奥行きのある天袋はものを取り出し難いため注意が必要です。雛人形、五月人形等のシーズンアイテムやアルバムなど、頻繁に出し入れせずにすむものを箱に入れて収納するとよいでしょう。
ZONE3:使用頻度の高いもののスペース
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気軽にものをしまいやすい中段は、詰め込み過ぎてどこになにがあるかわからない、奥のものが取り出せないといったケースに陥りがち。スペースをムダにしないために市販の収納ケースやオープンラックを用いて、空間を仕切ることで整理しやすく使い勝手がよくなります。ラックを使用するときは、耐荷重を確認し、しっかり組み立てること、そして、収納するものの量をきちんと調整することが必須です。
ZONE4:寝具の収納スペース
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季節外の毛布等の寝具を収納する際に気をつけたいのが、ズレ落ち。市販の布団収納ケースを使用するとズレ落ちの防止となり、衛生的にも安心です。限られたスペースを有効に活用するために、圧縮袋を使用するのも手ですが、その場合も中段や下段のスペースに立てかけて収納するといった、ズレ落ちに配慮しておくとよいでしょう。
また、冬場にしか使わないラグを収納する場合はロール状に巻いた後にしっかりヒモで括り、横に寝かせるなどひと手間を忘れずに行います。
ZONE5:大きなもの/重たいものの収納スペース
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ヒーター、扇風機、加湿器、除湿器といった季節家電、スーツケースなど、大きなものや重たいものは、押し入れでしたら下段に、クローゼットなら床の上に収納します。使用頻度が低いからといって、上段に収納してしまうと取り出す際に危険です。購入したときのケースを捨ててしまった場合は、ホコリよけカバーをかけておくことをおすすめします。
奥にしまう時には、キャスターの付いたボードの上に置いて収納すると重たいものも簡単に引き出すことが可能です。キャスター付きの収納用品は、地震があっても動かないようにロックをかけておきましょう。
+ワンポイント!
クローゼット/押し入れは大きな収納スペースなので、いろいろなものをたくさん詰め込んで収納することが多いので、収納内には埃がたまり湿気がこもりがち。収納量を減らして掃除しやすくすることも大事です。湿度の高い梅雨から夏の時期には、収納扉を全開にして換気することを忘れずに。扇風機で風を送ったり除湿器を使ったりするのも有効です。ものを安全に収納するとともに、衛生的に保つことも心がけましょう。
*ハンディゾーンとは…
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頭から手を下ろした指先までの範囲のことで、立ったままの姿勢でものを出し入れできる最も使いやすい収納スペース。