収納について考えるとき、大事にしたいのはどうしまうかではなく、いかに安全に取り出しやすく使いやすい環境を整えるか。収納コーディネーター すはらひろこさんに、ものを安全に心地よく使うための収納法を伺います。快適収納のキホンを押さえ収納プランを考えていきましょう。

すはら ひろこ

すはら ひろこ

株式会社アビタ・クエスト代表。一級建築士、インテリアコーディネーターの資格を活かした整理収納アドバイスに定評がある。

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キッチン収納はゾーンごとに考えましょう

ひとくちにキッチン収納といっても、場所ごとに主な作業は異なります。 物は「使う場所のすぐ近くに置く」のが基本。 キッチンを3つのゾーンに分けて、そこで行う作業やよく使う物を考えると、ベストな収納方法を理解しやすくなります。

●シンクゾーン
主な作業…「水」に関係する、食材や調理器具を洗う、水を入れるなど。 よく使う物…鍋、ざるやボウル、洗剤など。

●コンロゾーン
主な作業…「火」に関係する、食材を熱する、湯を沸かすなど。 よく使う物…フライパン、やかん、各種の油など。

●調理台ゾーン
主な作業…下ごしらえ、味つけなど。 よく使う物…さいばしやお玉などのツール、乾物、スパイスなど各種調味料など。

「フライパンをガスコンロの上に乗せて火をつけて、それから味付けをするから…」と、調理作業を順に思い出していくと、そこで必要な物もわかりますよ。

キッチンの収納タイプを知る

場所ごとに作業と使う物がわかったら、収納方法を考えますが、もうひとつチェックすべきポイントがあります。 それは「キッチンの収納のタイプ」。大きく分けて、「引き出し式」「開閉扉式」の2タイプがあります。あなたの家はどちらですか?

●引き出し式 近年はこのタイプが主流。引き出して使うので、奥の方まで出し入れしやすく、デッドスペースが発生しにくいのが魅力。その一方で、上から出し入れするので重ねてしまうことが多く、物によっては取りにくいことも。引き出しの高さやしまう物に合わせて、仕切る・立てて収納するなどの工夫が必要です。

●開閉扉式 引き出すスペースが必要ないので、コンパクトなキッチンでも出し入れしやすいタイプ。内部は仕切りのない大きな空間であることが多く、ただ雑然としまうだけでは取り出しにくく、奥の方がデッドスペースになってしまうことも。コの字ラックや引き出しケースなどの収納アイテムを活用して、棚や引き出しのようにすると収納量だけでなく、使い勝手もアップします。また、扉の内側も収納スペースとして利用できます。

収納タイプにより注意すべきポイントは異なりますが、共通するのは「取り出しやすく、迷子にならず、内部で転がったり落ちたりしない」こと。そこに注意すると、安全で使いやすいキッチンになりますよ。

ゾーン別に快適な収納方法を考えましょう

キッチンのゾーンごとの役割と収納タイプがわかったら、それに適した収納方法を考えましょう。ここでは「シンク下」「コンロ下」「調理台下」の収納スペースに加え、「壁面」を上手に活用することで、スッキリ&快適なキッチンを目指します。

ZONE1:シンク下

  • 湿気がこもりがちな場所なので、食材などは避けて調理器具を中心に収納を。
    水を入れて使う鍋などはここへ。

<引き出し式>
鍋ぶたはまとめて立てて

水を入れて運ぶ可能性のある鍋は、シンクのそばに置くのが便利。重いので下部の深い引き出しを定位置にしましょう。鍋ぶたはファイルボックスや専用ラックにまとめとくと、中で転がったり引っかかったりすることを防げます。

<開閉扉式>
伸縮棚でデッドスペース ゼロ

シンク下収納でクセモノなのが、出っ張った排水管。排水管をよけて設置できる伸縮式の収納棚なら、ぎりぎりまで収納スペースとして活用できます。空間をめいっぱい使えるので、デッドスペースができにくいのも魅力。

ZONE2:コンロ下

  • 火を使う場所なので、コンロ周りにスパイスなど熱に弱いものを置くのは避けましょう。フライパンなどを近くに置くと、スムーズに調理できます。

<引き出し式>
ファイルボックスで1つずつ立てて

フライパンなど取っ手の長い器具は、横にすると取り出す時に引っかかることも。引き出し内にファイルボックスなどを入れて仕切り、1つずつ立てると取り出しやすく、中でガタつくこともありません。

<開閉扉式>
まとめて引き出せる収納ボックスでいいとこ取り!

色々な種類があって煩雑になりがちな油などの調味料は、出し入れがスムーズな収納ボックスにまとめて収納。使用頻度の高い種類の調味料はできるだけ同じ収納ボックスに入れておくと、調理中に一つずつ取り出す手間が省けます。

ZONE3:調理台下

  • 下ごしらえや味つけに使うものはこの近くへ。調理台を常に空けておけるよう、その下を出し入れしやすく工夫しましょう。

<引き出し式>
小物は細かく仕切って

カトラリーやキッチンツールは上部の浅い引き出しに。備え付けのカトラリーケースがあることも多いですが、手持ちのツールに合わない場合も。100円ショップの仕切りなどを利用して、種類やサイズに合った仕切りを新たに入れることをおすすめします。

<開閉扉式>
引き出せるようにして出し入れしやすく

そのまましまうと奥の物が取り出しにくいので、引き出し式のケースに入れてから収納を。調味料のボトルなど、万が一の液ダレにもお手入れが簡単です。フタにラベルを付け、上から見た時にわかりやすい工夫をプラス。

ZONE4:壁面

  • 壁面も収納スペースとしてうまく活用すれば、使い勝手がさらに広がります。

突っ張り式の収納が安心

シンク周りは特にスペースが狭いので、上下に突っ張るタイプの収納がおすすめ。壁とシンクの間のわずかなスペースにも設置できて、デッドスペースを活用できます。上下で固定するので、強度も安心。ゆるみがないか定期的に点検することが大事です。

ZONE5:換気扇フード

  • アイデア次第で換気扇フードも、見せる収納スペースに。

よく使うキッチンツールは吊るすと便利

よく使うフライ返しやお玉など引き出しにしまいにくいキッチンツールは、換気扇フードの枠にS字フックをかけるなどしてコンロそばに吊るしておく方法も。調理の邪魔にならないよう、かける道具の位置に注意しましょう。