収納について考えるとき、大事にしたいのはどうしまうかではなく、いかに安全に取り出しやすく使いやすい環境を整えるか。収納コーディネーター すはらひろこさんに、ものを安全に心地よく使うための収納法を伺います。快適収納のキホンを押さえ収納プランを考えていきましょう。

すはら ひろこ

すはら ひろこ

株式会社アビタ・クエスト代表。一級建築士、インテリアコーディネーターの資格を活かした整理収納アドバイスに定評がある。

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吊り戸棚は高さに合わせた収納を考えましょう

吊り戸棚の特徴は、なんといっても高い場所に位置すること。そのため手が届きにくい、奥まで見通しにくいといった難しさがあります。では、そのデメリットを解消するにはどうしたらよいのでしょうか? 


吊り戸棚は、たいてい上下段に区切られています。上段と下段を分けて収納について考えましょう。

●上段 高さがあり、取り出しにくい位置にあるので、ひんぱんには使わないものを収納します。
<しまうのにおすすめのもの>・たまに作るお菓子の道具 ・かき氷器など季節用品

●下段 上段よりはまだ手の届きやすい高さに位置するので、よく使う調味料などを入れてもよいでしょう。
<しまうのにおすすめのもの>・調味料 ・デジタル計量器 ・よく使う食器

奥のスペースも賢く活用を

いずれも奥行きのある棚の場合、奥のスペースに入れたものを忘れてしまいがちです。よく前後2列に収納しているケースも見られますが、後列はたいてい死蔵することになるのでおすすめできません。

そこで活躍するのが収納用品。持ち手のついたかごなど、奥のものをラクに引き出せるアイテムを利用して、使いよくしましょう。たとえば揚げ物に使うこし器やキッチンペーパーなどをひとまとめにしまっておけば、かごごと取り出せば準備が完了するので便利です。
収納グッズを選ぶポイントは、吊り戸棚の寸法に合わせて、入れる物の分量や種類を考えること。色は透明なものを選べば、中身が見えるので忘れずにすみます。忘れる心配がなければ、白など見た目を重視して選んでもよいですが、ラベルを貼るといった工夫をしましょう。素材はプラスチック製が手入れしやすく、安価でおすすめです。上げ下ろしする際に持ち手に重量がかかるので、入れる物の重量に耐えられる丈夫な容器を選んでください。

収納用品を使うのは、安全面からもおすすめです。吊り戸棚は高い位置にあるため、適当に重ねてつっこむと、取り出す時になだれ落ちることも。きっちり仕切って、スムーズに出し入れできるようにしましょう。またキッチンに踏み台を用意しておけば、最上段まで出し入れしやすくなり、活用できます。
今の吊り戸棚は耐震用のロックが付いたタイプが主流ですが、ない場合は後から取り付けられる市販品もあります。ガラス製の扉が付いている場合は、飛散防止シートを貼ればより安心です。もし吊り戸棚の内部が高さはあるのに区切りのない状態なら、自分で棚板を追加する手も。突っ張り棚や突っ張り棒など、クギを使わず簡単に追加できる収納アイテムもあります。ただし、これらを使う場合はしっかりと強度をキープできるよう取り付けてください。

また、最下段の棚板に引っかけて使える収納ラックもあります。収納の少ないキッチンは、こういった便利アイテムを追加してデッドスペースを有効活用するとよいでしょう。

吊り戸棚をフル活用できる収納アイデア

吊り下げ式のラックでデッドスペースを活用

吊り戸棚から吊り下げて使える収納グッズを追加すれば、キッチンペーパーやラップフィルムを収納できるタイプや、ワイングラスやマグカップを吊るして収納できるタイプなど各種あります。各家庭のニーズに合わせて選びましょう。

取っ手つきの収納ボックスで奥まで取り出しやすく

吊り戸棚に入れる収納ボックスは取っ手つきのものを。取っ手の分、数㎝の奥行きが必要になることを計算に入れて選んでください。取っ手の分のスペースをムダにしたくない場合は、取っ手なしのかごにヒモでハンドルを付けるか、つまみがくり抜いてあるタイプのかごを選ぶのがおすすめです。
半透明の容器を選べば中身が丸見えになることを防ぎつつ、中身をチェックできます。収納容器を複数使う場合は、同じもので統一すると見た目もきれい。買い足すことを考えると、メーカーの定番品を選ぶのがおすすめです。