本多さんが一般のご家庭を訪問し、収納の悩みを解決するこの企画。今月の収納迷子さんは、「キッチンがどうにも使いにくいけれど、どうしたものかわからない」と首をかしげるなつこさん(仮名)です。お料理好きなのでもっと使いやすくしたいし、リビングから見えるキッチンだからスッキリとさせたい。あちらこちらで増殖している夫のモノも気になっています。

本多 さおり

本多 さおり

暮らしを愛する整理収納コンサルタント。雑誌やwebなどで暮らし重視のシンプルな収納術を提案している。『家事がとことんラクになる 暮らしやすい家づくり』(PHP 研究所)には物件探し&購入から家づくりの工夫まで紹介されている。また、新著書に『旅は暮らしの深呼吸』(集英社クリエイティブ)などがある。

http://hondasaori.com/

今回の収納迷子さん

なつこさん(仮名)
・東京都在住
・3LDK73.76㎡のマンション
・サッカー大好き夫、小6長女、年少長男の4人家族

夫のモノ、こどものモノ、家族共通のモノがバラバラに。モノ別かひと別にするべきですか?

食器棚の引き出し(左)と、収納上部のカゴに「あきひろランド」は拡大中!

なつこさんの何よりの悩みは、夫の「あきひろ(仮名)ランド」がじわじわ増殖していること。本格的にサッカーに取り組んでいるため、プロテインやアミノ酸といった栄養剤各種、暑さ対策の道具、加えて大好きなカップ麺やお酒など種類も豊富なのです。

「場所を決めてはいたのですが、溢れて増える困ったネバーランドなんです」とはなつこさんの弁。点在していれば、あきひろさんも管理しにくいことでしょう。
家族みんなの食材スペースにも侵食しており、ややこしいことに。

「決して荒れたキッチンではないのに、なんとなくすっきりしていないのは分別ができていないから? 収納は『モノ別』『ひと別』どちらかにしっかり分けたほうがよいのでしょうか」(なつこさん)

「〇〇別」と決めつける必要はなし! 大切なのは「頻度」と「動線」

まず、一番のお悩みであるあきひろランドの点在は、大きい場所を明け渡してあげることでかたが付きます。

ただ、モノによって「夏まで使わない」「週末使う」「毎日使う」と使用頻度が違うので、一概に同じところに入れておけばいいというわけではありません。

毎日使うモノはサッと取れる高さや場所であることが望ましいし、そんないいポジションにめったに使わないモノを入れておくのはもったいない。場所は有限、よい場所はさらに限定的です。

たとえば「あきひろさんのモノ」でも、頻度によって分けた方があきひろさんがラク。ラク=定位置に戻す習慣がつきます。
収納の改善をする際には、「頻度」と「動線」を考えましょう。

いざ実践!まずは気負わずできる「一部出し」をしてみよう

一番の理想は、キッチンのモノをすべて出し、既成概念にとらわれない収納を再構築できる「全部出し」。
けれどもこれは正直、モノの多いキッチンではとくにハードルの高い方法でもあります。
幸い、なつこさんは区画ごとに定位置をしっかり決めて収納していたので、すべてを出さなくても交通整理がしやすそう。

食料品と器に限定し、キッチンの外に運び出しました。

まずは食品から一部出し。

「食材がシンク下の引き出し、食器棚の引き出し、レンジ棚に散っていたためなんとなく使いにくかったんです。調味料も2か所に分かれていて、調理のたびに両方開ける手間が。しかも慣れてしまって、手間があることに気付いていませんでした」

かさばる食材はキッチンのあちらこちらに分散しがちです。
分散すれば「何がどこにあるか」を把握する必要が生じ、うっかり存在を忘れて買いすぎてしまったり、賞味期限を切らせてしまう原因に。

まずは、一部出しした中から、夫のあきひろさんのモノを抜粋します。
全体量がわかれば、どの場所が収納に適しているかを考えやすいですね。

プロテインは大袋から毎回すくって飲んでいるとのことでしたが、毎日のことであれば移し替えて飲みやすくしたいところ。目立つパッケージがそのままオープン棚に置かれていたため、キッチンの情報量を減らしスッキリ見せるためにも、詰め替えをしましょう。

今回の「買わない」で済んだ発掘収納①ストッカー

調理器具コーナーでブレンダーの付属品だったストッカーが、プロテイン容器としてぴったり……!
ストッカーはほぼ使われていなかったので、プロテイン用として活躍してもらいましょう。

こうしてまずは家にあるモノで試して生活してみて、「まさにぴったり」なのか、「もっと容量が必要」なのか等を検証します。実際に暮らしの中で使ってみてわかることは多いもの。明確に必要なモノがわかってから買いに行くのが正解です。

「あきひろランド」みごと一か所に集約成功!

今までは小さい引き出しと、収まらなかったものは食器棚の上部のカゴに溢れていましたが、食器棚の深い大きな引き出しに引っ越しすることで、あきひろさんのモノをまとめる作戦に決定。

かさのあるモノや背の高いモノは入れられる場所が物理的に限られるため、優先的に位置を決定していきます。
あとは、余った場所にどう配置していくか。
頻度や動線にそって選択肢が幅広いモノは後から決めていきます。

「新あきひろランド」は広くて深いため、細かいモノをあれこれ入れるためには工夫が必要です。あきひろさんの好きなパスタソース等を立てるために、ケースがほしいところ……

これ、ぴったりかも!「買わない」で済んだ発掘収納②百均のケース

隣のレンジ棚に吊るしてビニール袋を収納していた、いいサイズのケースを発見しました。
ビニールはほかのモノに入れても問題ないので、こちらを拝借。あきひろランドに移設します。

赤い囲み部分が、「買わない」で済んだアイテム

引き出し奥の壁に発掘したケースを掛け、これまでカップ麺に埋もれがちだった自立しない細かいモノ(パスタソースなど)をまとめました。
ケースに入れることでモノの下に隠れることもなく、期限内に使えるように。
食品の管理に必要なのは、「隠れない」「わかりやすい」です。

「買わない」で済んだ発掘収納③やわらかポリエチレンケース・ハーフ

毎日飲むサプリと青汁は、別で使われていた浅いケースにまとめて水道の近くへ。
サプリは水道近くに単独で置いてあったのですが、同じように毎日飲む青汁は引き出しの中でした。まとめればあきひろさんのラクにつながります。時短なだけでなく、飲み忘れを防ぐ効果も期待できます。

食器棚引き出しのBEFORE→AFTER

BEFORE
旧あきひろランドに隣接する、一番大きい引き出し。あきひろさんのモノが侵食し、そのほかの食材も「ごちゃごちゃしていてよくわからない」状態でした。ここにあきひろランドを移築します。

AFTER
一番大きい引き出しに、1か所で収まる「新・あきひろランド」建国です。これまでバラバラに置かれていた、プロテインとシェーカーも同じところに入りました。「自分のモノはここ」とわかりやすく、このなかで物量を調整しやすくもなります。深さのある引き出しのため、ほぼ使っていないモノを蓋つきボックスに入れて底に置き、上に使用頻度の高いモノを重ねています。

サッカーに熱く打ち込むあきひろさん、都リーグで勝ち抜き、今度関東大会に出場するそう!家族の応援は、収納でもできるのです。

BEFORE
旧あきひろランド。必要な持ち物に対してスペースが小さいことが課題でしたが、どうしても目線は「モノが溢れて困る」という方へ。

AFTER
なんと、空きスペースになりました! とくにたくさん処分したわけではないのですが、モノを整理して適したところに収めていった結果、空間にゆとりが出ました。空きスペースはなんぼあってもよいもの。無理に埋めようとせず、必要が来たときに助かりましょう。

本多さおりさんからのコメント

同居人に対する「モノが多すぎるから減らしてほしい」という要望はよく聞かれる声です。けれども解決への近道は、個人の尊重。余裕をもたせた専用スペースを用意してあげることで、ほかの収納への浸食を防げればウィンウィン。みんながハッピーな思いやり収納は、長い目で見ても効果が高いのです。

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