本多さんが一般のご家庭を訪問し、収納の悩みを解決するこの企画。今月の収納迷子さんは、東京都の小さな1Kに住まう一人暮らしの女性。パートナーが泊まりに来ることが多く、2人が快適に暮らすための部屋づくりを模索します。お悩みは、全体的にモノがごちゃごちゃ溢れていて手狭なこと。これは、どこか一か所を変えればよくなるものではありません。大切なのはモノの配置と人の動き。動線の改善から考えましょう!
今回の収納迷子さん
AKさん
・東京都在住
・6.5畳1Kのアパート
・パートナーがよく来るけれど基本はひとり暮らし。愛するペットはカメ
一人暮らしあるある!? 小さな棚が多く、床面積を圧迫するのが悩み

部屋を入ってすぐの眺めがこちら。正方形に近い一室です。窓の前に棚付きのベッドが置かれ、中央のローテーブルの周りを小さな棚が複数ぐるりと囲んでいます。
「このごちゃごちゃをどうしたらいいのかわかりません。テーブルの上にも下にもモノが溜まるのも悩みです」と、AKさん。
このテーブルで食事、仕事、メイクといったほぼすべての生活をしているのだから、モノが集合するのは当然です。気になるのは、小さい家具で囲まれて人のスペースがあまりないこと。歩くのですら、体の角度に気を遣ったりとストレスがあるはずです。

部屋の奥からドア側を見た景色がこちら。
コンパクトな住まいで起きがちなのが、「しまう場所が足りない」→「小さい収納家具を増やそう」を繰り返して棚を増やしてしまうこと。家具を増やす前に、一度持ち物の棚卸をする必要があるのです。「本当にこれは必要か」「この場所に必要か」を考えてみると、だいたいのケースで棚を増やさなくても解決します。
家具配置が原因で、クローゼットの稼働率が低い問題

部屋に唯一の扉付き収納、クローゼットの様子がこちら。スカスカで、稼働しきれていません。
実は、AKさんの持ち物は多くはないのです。ただ、みんな部屋に出てしまっているというだけ。
「クローゼット前にベッドがあるのであまりクローゼットにモノを入れる気にならないんです」とAKさん。

確かに、ベッドの存在がクローゼットへのアクセスをジャマしています。体を斜めにすれば入っていけるけれども、こういったちょっとした面倒が人の行動を抑制します。「行く気にならない」「しまう気にならない」動線は片付けの天敵。

こちらはクローゼット横の日用品がいっぱいの小棚。
一つひとつ、「部屋に出ていたほうが便利か」「クローゼットに入れても支障ないか」を見なおしましょう。
ちなみにこのようなシンプルなつくりのオープン棚、クローゼットのなかに入れ込むととてもよい働きをします(次号こうご期待!)。
インテリアを考えるその前に。家具の配置は、動線を考えて!

居室がひとつのため、生活のほとんどをここで行なっているAKさん。そこが動きにくければ、家事や片付けが滞るのは当然のなりゆき。
まず、今の動線にどんな課題があるかを洗い出しましょう。
・ベッドがジャマでクローゼットが使いにくい
・すべての通路がせまく、人のための空間が少ない
STEP1 いろいろな配置を試してみよう!まずはベッドの場所から

AKさんからお話を聞き、部屋に求めるものをまとめました。
・クローゼットにさっとアクセスしたい
・ごちゃごちゃしていない部屋にしたい
・必要なモノはテーブル周りに配置したい
・テレビを見ながら、パートナーと横並びで食事したい
これらの希望を叶えるべく、部屋をゼロベースにして構築し直してみましょう。
すべてのモノを部屋から出すのは面倒なようでも、実はこれが一番簡単で早い方法。実際に家具を動かして、配置のあんばいを探ることもできます。
この時に、ぜひ、部屋の隅まできれいに拭き掃除してみてください。空間が見違えてリフレッシュします!

動かすついでになんでもフキフキ。秘儀・モップと雑巾の二刀流!
●検証1 窓際にテーブルを配置

まず、ベッドを縦置きにしてクローゼットの前を大きく開けます。ベッドを入口側に寄せて、窓際にテーブルを配置してみました。
光が入るようになって居心地抜群!けれど正面にクローゼットがあるため、テレビを置く場所がありません。
●検証2 入り口ドア横にテーブルを配置→この配置に決定しました!

次はベッドを窓の方へ寄せて、テーブルを手前ドア横に配置してみました。おこもり感があって落ち着く感じ。AKさんご希望の「2人で並んで食事をしながらテレビを見る」も可能です。
すると自ずと、ベッドの位置も決まります。クローゼットとのスペースを取りやすいように、正面に置いていたベッドを縦に配置しました。
この配置では、入ってすぐにベッドが目に飛び込んでくる問題も解決です。
STEP2 配置は「大物」→「小さい家具」の順で

大物の配置が決まったら、次はたくさんある小さな棚の中から「本当に使用頻度の高いモノを収めて部屋に置く」ための棚を選びます。その棚を生活の中心であるテーブルのそばに配置すれば、快適で片付けやすい空間に。
今回の発掘収納!圧迫感のない棚

キッチンでインスタント麺置き場となっていた棚が、テーブル横&入口横のスペースにぴったり!ちょうどいいサイズのかごを入れ込めてなんともスッキリ。
入口のすぐ横に奥行きの深い家具が置かれると、入ってきた際に圧迫感があり、角に体をぶつけそうで気を遣う必要が出ます。そんなストレスを日常動作に持ち込みたくはないもの。
この棚であれば、コンパクトなのでその問題はクリアに。しかも、木製の枠であるため側面に床に直置きされていた電源タップをねじ止めすることができました。ホコリがたまりにくく、見た目もスッキリ。
ここから横のテーブルで使うパソコンやスマホ、電気ケトルやルーターの電源を取ることができます。

棚の上段にはケトルや加湿器を、下段にはお茶類を収納。これでテーブルでお茶を楽しむ機会も増えそうです。

また、テーブルゾーンの横にベッドの棚が来るため、仕事のために広げた資料やパソコンをさっとベッドの棚にどけて食事ができるようにも。ベッド下には仕事道具を入れたカゴを置けました。
たくさん棚がある場合は、いろんな棚でお試ししてみて

前述の小さな棚を置く前には、居室で使っていたカラーボックスを立ててみたり、寝かせてみたりとお試ししました。結局大きすぎて床面積を食うので、このスペースでの使用は見送りました。

もう少し大きなオープン棚もテスト配置。厚みがあるため入ったとたん体をぶつけそう。こちらもここでの使用を見送り。
このように、実際にいろいろと置いてみることでわかることがたくさんあります。
「ここで使いたい棚ではない」となった棚たちは、クローゼットの中に入れ込んで収納力を上げることに利用します(次号で詳しくレポートします!)。
クローゼットをフル稼働に!そのためには動線確保が必須

BEFOREの状態では、体を捩じ込めるようにしないとクローゼットにはたどり着けませんでした。

家具配置を変えた結果がこちら。部屋がこんなにも広く、クローゼットの前も大きく空きました。部屋のどこからでも、まっすぐクローゼットに向かうことができます!
出しておくモノを厳選し、室内の棚を減らすことで広く人のスペースを取ることができました。
窓の下にいるのは、ペットのカメちゃん。
「今まで日の当たらない所にいたので、気持ちがよさそうです!」とAKさん。
課題を割り出し、人が動きやすい配置を探る!
家具配置をする際に大切なのは、一人暮らしの部屋も、ファミリー暮らしの部屋も共通。「今、何が問題なのかを洗い出すこと」です。
その課題を解決するための配置を、クリアにした部屋でイチから構築しなおすこと。
ひとりでは大変だと思うので、できれば家族や友人と取り組むのがおすすめです。
ポイントは、考え得る配置パターンを数多く試してみることです。実際に座ったり、通ったりしてみることで、配置ごとに発見があり、「断然これだね!」がきっと見つかります。
AKさん、その後暮らしてみての感想は?
『部屋の中に「広いフロア」「テーブルゾーン」と2つ部屋ができたみたい!テーブル周りのおこもりスペースがとても居心地いいです。狭すぎて引っ越しも考えていたのですが、「このままでいいんじゃない?」とパートナーが言うほど広くなりました。
そして、これまで何をするにも中央のテーブルをよけながら動いていたのが、どこに行くのもまっすぐで快適!これまで動く時におっくうに感じていたことに気づきました。
そして一番の激変ポイントは……なんと、朝起きやすくなったのです!これまで午前中はずっとだるかったのに、ふたりとも目覚めがよくなり朝が苦ではなくなりました。これは窓の前からベッドを移動させたことで、部屋に光がたくさん入るようになったから。洗濯物もメイン窓の前に干せるようになり、気持ちがいいです!』AKさん
暮らしがよりよくなったと伺えて、こんなに嬉しいことはありません。
次回は、再びAKさん宅のクローゼットや棚の「わかりやすく片付けやすい」収納テクニックをご紹介します。