美しく整った空間で快適な暮らしを送りたい! けれど、ものは捨てたくない」そんな悩みを密かに抱えていませんか?
「捨てる」ではなく、いまある空間をしっかり見直して理想の暮らしに近づける方法をクローゼットオーガナイザー 鈴木尚子さんに伺います。あなたも暮らしを変えてみませんか?
いまある空間と自分の暮らしのスタイルを「知る」
前回「クローゼットづくりのルールを知る 前編」のクローゼットづくりでは、 自分にとってほんとうに必要なものがなにかを選ぶことが最初の作業であると教えていただきました。では実際にクローゼットづくりに悩む夫婦の事例をみながら、鈴木尚子さん流の具体的な方法を学んでいきましょう。
「“クローゼットづくり”といっても、理想とするクローゼットのカタチは人によって異なります。この部屋でどのような暮らしをしていきたいのか、いつくらいまで暮らしたいのか、クローゼットにどんなストレスを感じているのかなど、洗い出すことが重要です。そうすると頭の中が整理され、自分にとって必要なものの優先順位や選び方がみえてきます」と鈴木さん。
今回おじゃましたDさん宅は夫婦2人暮らし。ものを厳選するという作業は日頃から行っているものの、備え付けの押し入れをうまく活用できずに、2人分の衣類が寝室を圧迫しているという状況。
具体的な悩みは、3つ。
- 溢れている衣類をきちんと整理したい
- 押し入れを活用して寝室をスッキリさせたい
- 夫婦のものを混在させず一目瞭然の状態にしたい
【Dさんプロフィール】
- 家族構成:夫婦2人暮らし
- 間取り:1LDK
- 備え付け収納:押し入れ
そんなDさん宅に合わせ、必要なものの区別の基準として鈴木さんが挙げたのは、以下の4項目。
- ①「毎日/週1回使う」
- ②「好きだけど使わない」
- ③「迷う」
- ④「使わない、要らない」
Dさん宅の場合、表面的に日頃から使っているものは使用頻度に合わせて取捨選択されていますが、押し入れの奥のものまですべて出して整理してみると引っ越しのときのままのダンボールや、空のシューズボックスがスペースを占領していました。
「空き箱を残しているのは、空気をしまっているような状態。特にダンボールはかさばりますし、中身がよくみえないので時間が経つと空けることさえ億劫になってしまう。取捨するというレベルではないものは、すこしでもはやく空けて処分することをおすすめします」
“捨てたくない人”のための、快適収納とは?
「いまあるアイテムのほとんどが必要なもので、捨てたくないという家庭の場合は、空間をどう有効に使っていくかを考えます」
4つの基準をもとに、ものをきちんと区別していれば、次のしまう作業がとてもラク。
「『毎日使う』『週1回使う』ものは、いちばん手に取りやすいゴールデンゾーン*に収納し、『好きだけど使わない』『迷う』ものは手の届き難い場所にしまっても支障ないので、奥に保管します」
*ゴールデンゾーンとは、……「クローゼットづくりのルールを知る 後編」へ
さらに、鈴木さんは大容量の収納スペースを確保するため、壁面の縦スペースも効率的に活用していきます。
「『危ないから背の高い家具は置きたくない、けれどものはいっぱい置きたい』という方がいらっしゃいますが、それは矛盾していますよね。そんな矛盾を解消するためにも、自分がどう暮らしたいのかを考え優先することを明確にしておく必要があります」
Dさん宅の場合は、所持しているものの量を減らすことなくきちんとしまって、使い勝手をよくすることを優先。備え付けの押し入れと寝室の壁面のスペースを有効に活用し、すべてのものが一目瞭然に把握できる状態に整えました。
「扉を開けるような動作をしなくても、全体が見渡せるように可視化することで、ものを自然と管理できるようになります。持っているアイテムをすべて管理できていると、毎日のコーディネートが楽しくなるだけでなく、ムダなものを買わなくてよくなりますね」
処分したのは、引っ越してきたときのまま残していたダンボールや空のシューズボックスなど不要なものだけ。何がどこにあるのか見渡せ、すぐに取り出せる空間を実現
混在していた夫婦の衣類を整理し、壁面2面を使って夫と妻それぞれのスペースを確保。縦の空間をうまく活用し寝室を圧迫していた衣類スペースをスリム化し、一目瞭然の手づくりクローゼットに
「仮置き」で、自分にあった収納の方法を見つける
しまう作業のときに、鈴木さんが提言するのが「仮置き」。
「とにかく自分にとって必要なものだけにすること、その手順は絶対に変えられませんが、自分に必要なものだけにしたら、次はどの場所に置いたらいいのかな? ってみなさん考えますよね。すぐにわからなければ仮置きの時間を設ければいいんです。高価な収納用品や家具を購入するときに、失敗するのが恐い気持ちは当然。でも、いまあるアイテムを使って仮置きの期間を設けることはさほどお金もかからずにできます。プロだって、仮置きをするんですよ」
一度にたくさんの量を整理するのではなく、スペースを小分けにして少しずつ必要か否かを判断していくことが失敗しないコツ。今日は押し入れの右半分の下段だけ、次は上段をやってみよう、そして左側…といった流れで必要なものだけを残し元に戻す作業を繰り返していく。全部のアイテムが把握できたときにはじめてどんな場所にどんなふうに置こうかなと考えて「仮置き」を行います。
「仮置きの期間を経たら、あとはお楽しみのステージ。どんなインテリアにしよう、どんな収納にしようと考えていきます。みなさん真っ先にどんな収納用品を購入しようかと考えてしまいますが、収める前に必要なものの見極めが欠かせません。見極めの部分で片付けの70%は終了なんです。そのあとの何に収めるか、どういう風に収めるかは30%くらい。一足飛びにやろうとしないことです」
工夫がいっぱい、プロのしまい方のコツを拝見
クローゼットや押し入れを使いやすく、すっきり見せるために、収納用品はシンプルな色合いを選びます。 「シンプルな色の収納用品で統一するとクローゼット全体がすっきりまとまり、 衣類が選びやすくなります。女性はカラフルなアイテムを選んでしまいがちですが、すっきり見せたいときは色を使い過ぎないようにしましょう」
また、ハンガーの種類を揃えるのもおすすめの方法。 「クローゼットを改善させたいときは、ハンガーを変えることからはじめてみるのもいいと思います。安価で手に入れやすいものが販売されていますので、使い勝手のよいものを選びましょう」 市販のハンガーには衣類の型くずれ防止に適したものや、すべりにくい素材でできたもの、薄くて省スペース化できるものなど様々な種類があります。自分に合った使いやすいハンガーを選ぶのも美しいクローゼットづくりの第一歩。
ハンガーのデザインを統一
ネクタイには専用ハンガーを
掛けるスペースを増やして収納効率アップ
あなたにもできるはず! 空間を維持すること
空間を維持するためには、定期的な管理が必要。 ポイントは以下の4つ。
- 定位置管理 …置き場所を決め、使ったら元の場所に戻す
- 定量管理 …収納量を自分で制限する
- 定時管理 …片付けのタイミングを決めておく
- ものの持ち方 …ほんとうに大切にしたいものだけを購入する
「ここまでやったから“終わり”ではなく、収納には定期的な管理が必要です。 郵便物など、毎日暮らしていると家の中には1日1個はものが入ってきます。 1人1個でも、夫婦2人いれば、年間700個ほどのものが入ってくる計算になるのです。そう考えれば、定期的な見直しの必要性がわかりますね」
自分のライフスタイルに合わせて、使いやすいクローゼットをつくったら、それを管理・維持していくまでが鈴木さん流の収納ルール。すべてのアイテムに住所を作り、「定位置管理」「定量管理」「定時管理」。「定位置管理」とはものを使ったら元の場所に戻すこと、収納スペースは決めた枠に入るだけとするのが「定量管理」、「定時管理」で片付けのタイミングもしっかり決めておきます。
「使ったものをスムーズに元の場所に戻せない、ものが増えて決めていた枠を超えそう、といった状態は見直しが必要となるサイン。空間が乱れてきたり、やりづらいなと感じたときに、ちょっとしたストレスをそのままにしないで改善することが暮らしを快適にしてくれます。そして、いつ片付けるかも大事。お子さんがいる家庭ならお風呂に入る前、ご夫婦だったら夜寝る前の数分を片付けの時間にする、あるいは、土日に1時間だけ片付けしようと決めて続けることが維持に繋がっていくんです」
最後に忘れてはいけないのが、ものの持ち方。
「ものを購入する前にほんとうに大切にしたいと思うものを選べるように 色、素材、形状、様々な視点からものをみて厳選し、入り口を整理することが大事です。部屋のなかに自分のフィルターを通した好きなものばかりが集まると、暮らしは心地よくなりますし、ちょっとくらい散らかっていても気にならなくなりますよ」