前回(「自分にあった心地よい収納法とは?」)、自分にとって心地よいクローゼットの収納方法について利き脳のタイプ別に紹介しました。そこで、これから洋服の片付けや収納を行う方、いまあるクローゼットを改善しようとされる方に、収納のプロならではのセオリーをご紹介。機能的なクローゼットを維持するには、いくつかのワケがありました。
自分のライフスタイルに合わせた収納場所を決める
洋服やアクセサリー、バッグなど手持ちのアイテムを収納していくとき、「決まった一つの場所に、きちんとしまわなければ…」といったある固定観念をもってしまっている人が多いのではないでしょうか。
「私たちが衣類の片付け収納サービスを行うとき、お客さまのお宅に伺って必ず確認する内容が、『そもそもクローゼットの場所はそこでよいのか?』ということ。お客さまによっては、クローゼットの場所から見直してもらいます」というのは、クローゼットオーガナイザー 鈴木尚子さん。
「その方のライフスタイルに合わせた使いやすいクローゼットをつくるにはクローゼットの場所も重要になりますので、『行動動線』を考えて収納場所を決めていきます」
洋服の収納場所を決めるときに確認する主な行動動線は下記3つ。
- 朝起きて身仕度するまでの着替え動線(パジャマ▶︎部屋着▶︎外出着)
- 帰宅してから就寝するまでの着替え動線(外出着▶︎部屋着▶︎パジャマ)
※冬の時季は、コート類の着脱しやすい場所も意識します。 - 洗濯してから、干して、しまうまでの洗濯動線
鈴木さんは、着替え動線だけでなく、自分にあった服の収納場所を決めるには洗濯動線まで意識して考え直すことが必要な場合もあるといいます。
「おうちによっては行動動線が悪いがため、服を決まった場所に片付けられなくなっていることもあります。たとえば3階建ての住宅でしたら、1階のバスルームで洗濯してから3階のベランダまで干しにいって、取り込んだあとは、各家族の部屋にしまいにいくといったすごく大変な思いをして洗濯を行っていることもあるんです。
その手間が次第に億劫になって、取り込んだ衣類をソファの上に積んだまま放置してしまうといった状態を引き起こします。そんなときは、家族それぞれの部屋にクローゼットが別れているよりも、クローゼットルームのようなスペースを1つ設けた方がスムーズに暮らせるということもあります」
毎日の行動動線を考えて収納場所を見直せば、置きっぱなしや脱ぎっぱなしを防ぐだけでなく、ムダな時間や労力をなくすことにもつながりそう。仕事や家事、子育てをこなす忙しい女性にぜひ取り入れていただきたい方法です。
洋服の収納場所は1つとは限りません!
鈴木さんの着替え動線を参考に、毎日の行動動線を考えてみましょう。
「私が1日に着る服は、パジャマ、部屋着、外出着です。それらすべての収納場所をはじめからクローゼットと決めてしまうのではなく、パジャマを脱ぐ場所、外出着から部屋着に着替える場所など、各アクションをどこで行うのかをふまえて、その動作がスムーズに行える場所に収納を備えつけています」
【鈴木尚子さんの着替え動線】
1.寝室
1日の始まり。起きたら次は…
2.バスルーム
3.クローゼット①
4.クローゼット②
5.バスルーム
大事にすべきは「自分にとってやりやすい方法で、出し入れしやすい状態」にすること
動線をふまえて収納場所を考えていく際に気をつけてほしいことがあります。それは、家族で暮らすご家庭の場合に、自分の価値観だけで決めてはだめということ。上記でご紹介した「鈴木さんの着替え動線」を考えて決めた収納場所は、あくまでも鈴木さんにとって心地よく機能的な収納場所です。ご主人やお子さんにはそれぞれに合わせた収納方法を決めているといいます。
「家族でも行動動線は異なりますので、スムーズにアクションが行える収納場所も心地よいと感じる収納法も異なります。ご主人様と一緒にクローゼットを使う方もいらっしゃいますが、そのときはできるだけきちんとした境界線をもつこと。境界線をもってもキレイな状態を維持できないようなときは、相手のせいにするのではなくてまずは自分から片付けてみようという気持ちをもってみてください。一緒に暮らしていると、キレイな状態はもちろん、汚い状態も相手に移ってしまいますから。お互いの心がけが大切になってきます」
ライフスタイルの変化に応じて、行動動線も変わることを知る
クローゼット収納を維持していくためには、手持の服を定期的に見直したり、ライフスタイルが変わるタイミングでは行動動線から見直すことが大切です。
「最近は衣替えを行うご家庭が減ってきていますので、私がおすすめしているのはシーズンごとにスタイリング計画を立てることです。服は流行の流れがとても早いので、『いま自分が着たい服はどれかな?』といったクローゼット内のアイテムの見直しを3ヵ月ほどのペースで行います。不要なものは処分し、いま着るものだけを取り出しやすい状態にしておくことで、服が選びやすい状態をキープでき、お買い物で失敗することも軽減されます。そんな定期的な見直しを行っていても収納がうまくいかないときは、ライフスタイルの変化に伴い、行動動線が変わってしまっていることが原因かもしれません。ワークスタイルの変化やお子さんの成長とともに行動動線も変わってきますので、その変化を見落とさないようにしたいものです」
自分にとって正解のやり方をみつける
鈴木さんは、自分自身にとって心地よく出し入れがしやすいことが「機能的なクローゼット」の条件だといいます。
「たたんでキレイに収納するということも大事ですが、たたむことを『キレイにたたもう』と思いすぎてしまい、それがストッパーとなってできなくなってしまう人って多いんです。収納場所を決めたらひとつの引き出しにポンと放り込むだけでも自分にとって心地よいと感じられるのでしたら、それでいいので す。収納の仕方にこだわりすぎるよりも、どこに戻したらいいのかわからなくてあちこちに置きっぱなし、かけっぱなし…という状況が問題。自分にとって取り出しやすい方法で、出し入れしやすい状況にするというのが重要だと思います」
やるべきことは自分にとってなにがいちばんやりやすい方法なのかを考えていくこと。自分にとっての正解のやり方を知ることから。
(つづく)