日本では約1500年の歴史を持つ伝統文化「お香」。香りを楽しむだけでなく、邪気を払う意味でも用いられてきました。そんなお香が実は手作りできるって、知っていますか? ひとつひとつの香りを自分で確かめながら、静かな空間で調合していく作業は、まるで平安貴族のように優雅で、安らぎのひととき。今回は、練り合わせて作ったお香を抜型にはめて作る「印香」作りに挑戦します。
今回教えてくれたのは
東京・神楽坂に店舗を構える「Juttoku.」は、お香の専門店。古くから暮らしに彩りを添えてきたお香という文化を現在に伝えます。お香の歴史を学びつつ、ひとつひとつの香りを確かめ調合するお香づくりのワークショップには海外からの観光客も多く、英語での説明にも対応しているそう。
香りに満たされた静かな空間に感覚が研ぎ澄まされてゆく店内
明るく静謐な店内には水音が心地よく響き、これから始まる伝統体験に胸が高鳴ります。
お店で扱うのは、淡路島の熟練の調香師による天然植物が素材のお香だけ。そのお香を楽しむためのモダンな香皿など、こだわりアイテムも購入できます。
さっそくお香作りのワークショップを開始!
封をされた白い桐箱を開けると、中に並ぶのは色も香りもまったく違う9種類のお香の粉。基本となるベーシックな「白檀」の他に、「龍脳」などあまり聞いたことのないお香の名前もあって新鮮。
「Juttoku.」のお香はすべて天然の香料。原料となる香木やスパイスの実物も見せてもらえます。粉になる前はこんなに個性的な形をしているんですね!
一言で「お香」と言っても、甘い香り、爽やかな香り、エキゾチックな香りなど、まずは香りの幅の広さにびっくり。香りの特徴だけでなく歴史まで説明してもらえるので、ストーリーと共に香りが楽しめます。これを調合してオリジナルの香りが作れるなんてわくわくします!
オリジナルの調合はハードルが高いけれど、まず最初は練習できるから大丈夫!それぞれの香りの特徴を知り尽くした先生の指示通りに計量スプーンで図って調合していきます。
すり鉢に入れ、すりこぎでまんべんなく混ぜ合わせると、原料とは違う香りが立ちのぼります。元の香りをひとつずつ教わったからこそ違いが分かって楽しいし、ちょっと理科の実験のようで童心に返ったような気持ちに。
香りを確かめることは「聞く」と言うそう。粉を足すごとに香りを聞くと、思いもよらない新しい香りに変わっていって、感動!
お香の調合の量や順番は、専用の紙にメモ。次にオリジナルの調合をする際の参考にもなりますね。
ではさっそく、オリジナルのお香作りにチャレンジ! 編集部は夏をテーマに、爽やかな香りを目指します。
調合する粉の合計は、いちばん大きなスプーンに4杯分なので、香りを加えたらすぐにメモしておきましょう。調合に集中すると忘れそうになるので注意(笑)。
足すたびに表情を変える香りを聞いて楽しむうちに、いつしか自分自身と向き合っているような感覚に。日常の喧騒から離れたこの穏やかな時間こそが、お香を手作りする醍醐味かもしれません。
香りを聞きすぎて迷ったら、コーヒー豆の香りでリセットすれば大丈夫。
イメージした香りに近づけようと、方向性に悩みながら少しずつ慎重に足して、30分ほどですべての粉の調合が完了。
いよいよ固める作業です。そのままでは固まらないので、つなぎとして木を削った粉と水を加えて、練り上げます。
水を加えてドロドロした状態からまとまらないので、先生にバトンタッチ。あっと言う間にもっちりとしてきて、ひとかたまりに。さすがの手早さです。
手のひらで丸めて紙にはさんで平たくしたら、型で抜いていきます。クッキー作りみたいで楽しい!
日本の伝統的な柄からキュートなものまで、型は30種類以上から選べます。富士山や燕に加え、金魚など夏らしい型もセレクト。
型抜きしたら、残った生地をまた丸めて伸ばし、どんどん抜いていきます。けっこうたくさんできて、満足!
最後にお香に名前をつけます。お香に名前をつけるなんて初めてだけど、そこまで構える必要はナシ。中には好きなアイドルの名前にする人もいるそうで、意外と自由に楽しんでOKなのです。
ついに完成!
きれいな木箱に入れて家に持ち帰ったら、まめにひっくり返しながら3日ほど乾燥させます。軽く固くなったら、手作りのお香の完成。火をつけて、自分で調合した香りを楽しみましょう。
乾燥させて焚いてみました。爽やかでオリエンタルな、初夏をイメージしたオリジナルの香りは特別な気持ちにさせてくれます。
まとめ
目に見えない香りを作るうえで大切なのは、考えるより感じること。心を研ぎ澄ませて、自分の中のイメージに集中していく感覚は、ふだんの生活では使うことはありません。1時間と短いながらも濃密な時間で、自分の中に隠された新しい引き出しを開けるような、新鮮な体験でした!
- 難易度 ★
- 時間 1H
- 満足度 ★★★
- 金額 4,860円〜
今回教えてもらったのは…
- Juttoku.
- 住所 東京都 新宿区弁天町 23番地ホワイトキューブ101
- 営業時間 平日 12:00~18:30(金 17:00閉店)土日祝 11:00~18:30
- 定休日 水木・臨時休業あり
- 問い合わせ
- 03-6205-5211
- http://juttoku.jp