ハウスメーカーに依頼することになった、築35年セカンドハウスのリフォーム。決め手は担当者のこの家に対する“愛情”でした。計画を進めるうちに、「せっかくやるなら、ここも」と欲が出くるもので…。

N・Y

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東京郊外の一軒家で、3人家族+柴犬(3歳)と暮らす、恐妻家のお気楽会社員(53)。30年以上続けるアマチュアJAZZバンドでは、ギターを担当。ジャズ雑誌などで評論記事を執筆。暮らし系のエッセイは初挑戦。コスパよく別荘生活するコツを、あまり堅苦しくなく、お伝えできたらと思います。

手に入り得ないと思っていた古い建築図面を携えてやってきた、ハウスメーカーの担当者

ハウスメーカーに35年点検の申し込みをして、その日程に合わせて私もセカンドハウスへ。
妻は都内から離れられない仕事があったので、今回は私と息子、柴犬のゴン太だけで早朝から出発し、信州へと向かいました。

ゴン太はクルマが大嫌いで、いつもケージの中に入りながら震えていましたが、セカンドハウスに行き来するようになって、ずいぶん慣れたようです。このところ、クルマの中でものんびり眠るようになりました。

約束の時間よりもずいぶん早めに到着し、まずは家中の換気です。シャッターを上げて、窓を開けます。
「さっむ〜!」
息子が言いました。4月の終わり、もうゴールデンウイークでしたが、標高1600mのわが家は、気温10℃。とても寒いです。ストーブをつけました。
そうこうしていると、ピンポーンと来客を告げる音が。

やってきたのは、ハウスメーカーの担当者2名。
建築当時の古い設計図と、途中まで続けられていた点検のカルテを持参していました。
私は設計図なんて、どこからも手に入れることができないだろうと思っていたので、それらを見て、なんだか感動……なんというか、『ファミリーヒストリー』のような、知らなかった血縁に、時を経て初めて会ったみたいな、そんな気分になったのでした。

2人は外と室内に分かれて、数時間をかけてくまなく点検をはじめました。
それが終わると、撮った写真をiPadで示しながら、この家の構造と、現状の問題点、そして大丈夫なポイントについても、わかりやすく説明をしてくれました。
そして、私たちの希望についてヒアリングをした上で、プランを後日提案してくれるとのことで、帰って行ったのはもうすっかり夕方でした。

彼らが帰った後、息子が言いました。

「ボクさ、よくわかんないけど。すごくわかりやすかったし、誠実な感じがした」

なるほど、あまり気にしていないようで、中一の息子は大人たちのことをよく見ているんだな…そう思いました。

リビングにようやくカーテンがついてマイホーム感がよりUP

そういえば、このリビングにはカーテンがありませんでした。
妻がオーダーしてくれたカーテンをこのとき持参して、取り付けてみました。
リフォーム前ですが、インテリアデザイナーさんと色合いは相談しておいたので、やっぱりカーテンくらいはあった方がいいだろう、ということで注文しておいたのです。

カーテンがつくと、なんとなくプライベート感が高まって、安心するから不思議です。
息子もゴン太も、すっかりくつろいで、楽しそうでした。

ここはカーテンレールがものすごく上の方についているので、カーテン自体が高くつきました。
担当者の方に、「カーテンレールはすぐ下げられるから、リフォームしてからでもよかったのに」と言われましたが…まあ、仕方ないですね。

翌日は、息子が浴室の掃除を手伝ってくれました。
それにしても、洗面所の壁紙ハガレが凄まじいです(笑)。これもいい記録です。

ドッグフレンドリーな善光寺に立ち寄って、息子と食べ歩きを楽しんでから、帰京しました。

プロに聞かないとわからないプランニングに目からウロコ

さて、自宅に戻ると数日も置かずして、メイン担当のIさんからメールが入りました。
もう大まかなプランが添付されています。
そして、次の週末にでも具体的な説明をしたいので、長野から、都内の自宅へお邪魔していいですか、というではありませんか!
妻も都合がよかったので、すぐにOK返事をして、その週末にIさんと再会することになりました。

長野からクルマでやってきたIさんから、懸案の屋根と外壁について、また説明を受けました。
この先30年を快適に使いたいなら、やはり修繕は必須とのこと。工法についても詳細な説明がありました。

室内については、インテリアデザイナーの提案に沿ってプランニングしてくれるとのこと。
ところが、いくつかの案については、無理があるとのことで反対されました。
まず、キッチンの色合い変更について。
現行のものに、シートを貼ってイメチェンするという案があったのですが、このキッチンの場合は、シートがすぐに剥がれてしまうので、お金をかける意味があると思えない、と。

いろんな色のシートを貼って、検討していたのですが…。

また、換気扇まわりにタイルを貼りたいと思っていたのですが、これもパネルの構造上難しいとのことでした。

こんなふうに、タイルを合わせて検討していましたが、そもそも、キッチン自体を取り替えないと、タイルは無理だということがわかりました。

すると妻が言いました。
「じゃあ、キッチンを丸ごと変えます」
えっ、と私はびっくりしましたが、Iさんは言いました。
「もともと、想定されていたことをしようと思ったら、キッチンを取り換えるのに近いお金がかかります。ですから、思い切って変えてしまうのは、手ですね」

「あと、二階の書斎も、壁紙を変えてもらえますか? ここにダウンライトを入れたいんです。ここの照明の場所も変更して、あとは…」

次から次へと、妻が、さらなる要望を言い出します。
インテリア周りは、もう妻に一任することにしました。

ウッドデッキプランから、環境を生かした場所づくりに変更

「それから、ウッドデッキですけども、このエリアでは、ちょっとおすすめできません。作ったとしても、何年持つか? という感じです。どうしてもウッドデッキが欲しいですか?」

ウッドデッキについては、玄関の崩れをカバーするのと、家の周りでバーベキューでもできればいいな、という希望を話したときに、インテリアデザイナーのSさんが考えてくれたプランなのでした。

「ここまで高地でなければ、とてもいいプランだと思うんですが、どうしても、凍害が厳しいエリアなので…おすすめしません。玄関ポーチは仕立て直すとして、これだけ広い敷地があるのですから、ここらへんを均して、バーベキューができる広場のような場所を作るというのは、どうでしょうか?」

それは妙案!
確かに、わざわざウッドデッキを広げなくても、バーベキューができる場所なら、いくらでも作ることができそうです。

「リビングの掃き出し窓から降りられる階段を作って、その周辺に広場と、駐車しやすいスペースもきちんと作って、小道でつなげましょう」

なんか別荘っぽい!
Iさんのプランニングに、盛り上がる私と妻なのでした。

その後、何度か、自宅とセカンドハウスを行き来してIさんと打ち合わせを重ね、ほとんどのプランが出来上がりました。

「Iさんは、やっぱりこの家自体に愛情を持ってくれている人だから、提案内容が深かったわね」

妻が言いました。
私も同じことを考えていました。Iさんには、長くひとつのハウスメーカーに勤めている、その矜持を感じたのです。

もちろん、リフォームの匠は世の中にたくさんいるでしょう。設計図も失われた家を蘇らせた例は、雑誌やネットでいくつも見ました。私たちの場合は、たまたま、そういうパターンではなかった、もとの家をつくったハウスメーカーに出会って、リフォームするという流れだったわけですが、これはこれでよかったのではないかな、という結論に至りました。

さて、いよいよこの夏、リフォーム工事がはじまります。
またレポートします。

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