自宅にソファがほしいなあ…と漠然と考えていたところ、信州のセカンドハウスの方に思いがけず大型ソファが転がり込んできました。そのため、途中で少しリフォーム計画を変更することに。なんとも不思議な顛末をお話しします。

N・Y

N・Y

東京郊外の一軒家で、3人家族+柴犬(3歳)と暮らす、恐妻家のお気楽会社員(53)。30年以上続けるアマチュアJAZZバンドでは、ギターを担当。ジャズ雑誌などで評論記事を執筆。暮らし系のエッセイは初挑戦。コスパよく別荘生活するコツを、あまり堅苦しくなく、お伝えできたらと思います。

今度は「家具をもらってくれませんか?」

暦の上では秋になっても、都内はまだまだ灼熱地獄。一方セカンドハウスがある山の上は、かすかに紅葉がはじまり、朝晩冷え込むようになっていました。それは、屋根と外壁の工事が進み、玄関まわりや階段の室内リフォームがはじまったころのことです。

足場が組まれ、ハウスメーカーの名前が大きく記されたシートがかかっているわが家を見ながら、同じ別荘地のご近所さんが声をかけてくれました。

「リフォーム、順調に進んでますねえ。ここはしばらく空き家になっていたから、寂しかったんですよ。Nさんがきてくれて、たまにリビングにあかりが灯っているのを見ると、なんだかほっとしてね、うれしいです」

お互いに来たり来なかったりで、たまの週末にしかお会いできませんが、こうして少しずつ交流がはじまるのは、とってもうれしいことです。
世間話をしているなかで、そのご近所さんが意外な申し出をしてくれました。

「そうだ、実は僕の親戚が、ここからちょっと離れた場所に別荘を持っているんですけど、そこをこれから建てかえると言ってましてね。家具も全部買い直すから、もらってくれないかと言われたんですよ。でも、うちもほとんど揃えてしまってて。ベッドだけもらうことにしたんですけど、ソファとか、いろいろまだあって、引き取り手を探しているんだそうで」

「へえ、そうなんですか。けっこう長く使ったんですか。ご親戚の別荘は」

「いやそれが、まだ数年なんですよ。家具だって、3年しか使ってないんです。全部フルオーダーしたもので、なかなかいいものらしいんですけど。家具は売るのも処分するのも大変だし、せっかくなら誰か大事に使ってくれる人に譲りたいと。あ、もちろん、無償です」

ご近所さんはそう言って、スマホでご親戚の別荘の写真を見せてくれました。
それは、ドラマでしか見たことのないような、ゴージャスな室内でした。30畳はあろうかという広々リビングに、モダンなソファがででんと置いてあります。

「このソファなんてどうですか? 合うんじゃないかな。こちらの家に」
「ええっ? こんなソファ、もらっちゃっていいんですか?」
「いいんですよ、引き取ってくれたら、親戚もよろこびます」

トントン拍子でゴージャス家具をもらう話が進み…

その日はそれでお別れをしたのですが、半信半疑でした。
ところが後日、ご近所さんからメッセージが届いたのです。

『Nさん このたびはソファを引き取ってくださるとのこと、ありがとうございます。親戚がとても喜んでおります。つきましては、@月@日に搬入させていただきたいと思いますので、その時、長野へ来られますか? わが家も含め、引越しトラックが別荘地内に家具を運搬して回ることになりましたので、ご検討ください。よろしくお願いします。ソファのスペックを添付しておきます』

そこに記されていたのは、都内の某インテリアショップのURLでした。冷やかしで立ち寄ったことはありますが、買い物をしたことはありません。家具だって、「どんな人が買うんだろうな〜」と思って流し見するような、つまりは、まったく縁のない高級店だったのです。

ソファの値段はサイト上に記載されておらず、登録した上でカタログをダウンロードする必要がありました。その手順からして、雲上人のための店という感じ。ソファはどれもなかなかのお値段です。さらにサイズを細かくオーダーしたということですから、いったいいくらだったのか…。

『こんなソファをいただけるなんて、本当にびっくりです。せめて運送料だけでもお支払いしたいのですが』

そうメッセージを送ると、

『いらない、いらない。もうルート上で配っていくだけだから、大丈夫だと言っています。日程は大丈夫そうですか? では、当日』

おかねもちって……す、すごい。
私と妻は、すっかり呆気にとられてしまいました。

身の丈に合わないソファは果たして収まるのか?

さっそくハウスメーカーの担当者Iさんに連絡して、スペックを送りました。こんなソファがくるんですけど、入りますか?と。Iさんは慌てて電話をかけてきました。

「Nさん、どえらいものをもらいましたね。いや〜、びっくりですよ。それにしても問題は、入るのかどうか、です。ちょっと図面を見直してみたんですが…壁面収納の可動棚を、諦めるしかないかも……」

なんと、そんなにデカいとは。
Iさんはそれから何度かシミュレーションしてくれたようです。数日後、解決策を見出したと図面を送ってきてくれました。

「リビングにつける予定だった可動棚を、ダイニング側に変更しましょう。それならなんとかいけそうです。よかったですね、LDKのリフォーム前で。可動棚がついていたら、このソファ、収まらなかったと思いますよ」

リフォームが終わり、なんとか収まった状態が、こちらです。

ご覧の通り、サイズはギリッギリでした。
ソファ自体は2つに分かれているので、最悪は1台を、2階へ持っていくかと話していましたが、それでも大きいので、運べたかどうかも怪しいです。リビングはほぼソファで埋まってしまいましたが、その座り心地たるや…。これがおかねもちの世界か、と、唸ってしまうような素晴らしさです。

身の丈に合わないソファをいただいて、申し訳ないような気持ちになりましたが、捨てられてしまうよりは、と思い直し、大事に使っていこうと決めました。

LDKの壁紙はご覧の通りピンクベージュにして、リビングの照明はダウンライトを採用しました。ここに大きなソファが収まり、自宅の納戸にしまい込んでいたガラステーブル、リサイクルショップで買ったマット、IKEAのスタンド照明を組み合わせて、なんとも予想外に、ホテルライクなインテリアが完成しました。

に、しても、窓から見えているわが家のおんぼろ軽自動車…。
新しいインテリアとのコントラストに、笑ってしまいます。

壁面収納の棚はダイニングに移動させて大正解

これはソファ側のあるリビングからダイニングを眺めた写真です。
ホテルライクなリビングとは違って、当初想定していた民藝風のインテリア。ごった煮感は否めませんが、わが家らしいかな、という気もします。

もともとリビング側に取りつける予定だった壁面収納可動棚を、ダイニング側に変えたわけですが、結果的に、これが大正解でした。食器を置くスペースができたので、食事のときの動きがとてもスムーズです。

HOUSTOでもたびたび取り上げられており、ずっと気になっていた「ロイヤル」製の壁面収納、「シューノ」を採用しました。棚板を動かすのがとても簡単なので、妻も喜んでいます。諏訪で買った棚も組み合わせることができて、いい感じです。

棚の一番上には、フェイクグリーンを飾りました。
「植物が育てられない別荘には、ドライとフェイクのグリーンが最適」とは妻の弁です。

本、食器、雑貨類、いろんなものを並べても、まだまだ広い。懐のある収納力に、感動です。
マグカップや取り皿など、すぐに使いたい食器はダイニングテーブルのすぐそばに配置しました。

もともとあったソファは都内の自宅で活躍

この家をもらい受けたとき、残されていたソファがあったのですが、これらは都内の自宅へ持って帰りました。

自宅では、もともとガーデンルームに置いてあったアンティークのバタフライテーブルをセカンドハウスに移し、スペースが空きました。そこに小さなソファを買おうかな、と考えていたところだったので、自宅にとってもありがたい展開になりました。

セカンドハウスから都内のわが家にやってきたソファは、すっかりゴン太のお気に入りスペースになりました。

それにしても、こんなふうにもらいものが続いて、わらしべ長者になった気分です。
すべてたまたま、です。
でも、私は、ちょっと思うのです。

セカンドハウスも、ソファも、「ほしいなあ」と考えていたものが、やってくる。逆に言うと「ほしい」と考えていなければ、手に入らなかったと思います。
不思議なことではありますが、自分で買うにしても、こんなふうにめぐりめぐって誰かからいただけるにしても、「ほしい」と考えることが、とても大切なんじゃないか、と思うのです。
「引き寄せ」って、本当にあるんだな…と、この家と出会ってから、よく考えるようになりました。

さて次回は、今年一年の締め括り。リフォームにかかったコストについて、できる範囲で公開したいと思います。お楽しみに!

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