「特徴がないのが特徴」の焼き物とは
ぼってりとした優しい手触りの益子焼や、海の生き物が大胆に描かれる沖縄のやちむん。
その土地の味わいが映し出される焼き物ですが、「特徴がないのが特徴」と巷で呼ばれるほど、産地の見分けが難しい焼き物があります。
それは笠間焼。茨城県笠間市の名産品です。
東京から車で1時間半ほどの距離のその街では、毎年春に陶器市「笠間の陶炎祭(ひまつり)」が行われます。
代表的な形や色は特になく、その街周辺で作られた焼き物は笠間焼、というフランクなくくりであるこの焼き物。長い歴史はありつつも、作家がさまざまなスタイルで自由に作り上げる焼き物は通称「自由焼き」とも呼ばれています。
なんとも風通しがよいですよね。
そのお祭りである「ひまつり」は、審美眼を試されるもの…というよりは、街に集う作家さんたちとおしゃべりを楽しみながら作品を購入したり、美味しい食べ物の出店がたくさん並んだり、ライブがあったりなど、自由で楽しい祭宴です。
出店ブースは200以上!ぜひお気に入りの職人を探してみて
訪問からすっかり時間が経ってしまいましたが、この春も「ひまつり」に行ってきました。
今回はこどもたちが一緒で、作品に触れて壊してしまったら…なんて不安もありましたが、それも杞憂。こどもたちは広々芝生で走り回ったり、傾斜地で自作の芝そりを滑ってみたり、自然の中でなんとも楽しそう。
出店者数はなんと200ブース以上!
毎年訪れるこの祭りですが、全部見ていたら数日あっても足りないくらい。
わが家では毎年訪問したいお店をメモしておいて、数店舗をじっくり見るスタイルにしています。
「規格通りに作るのはやめちゃった」玄人の金言
毎年我々が必ず訪問するのが、その道50年ほどの職人、飯田卓也さんのブース。
全体的に温かみがありつつも、どこかシャープで他にはない色使いが新鮮な印象を与えるのが、飯田さんの作風です。
毎年飯田さんのお店で数点購入するのですが、どれも家に持ち帰ってから飽きることなく、眺めるたび、そして使うたびに嬉しくなる器たち。
今年もそんな器と出会いたい!と鼻息荒くブースに向かいました。
今年欲しいと思っていたのは、夏に使いたいそばちょこ。
ちょうど良いものが2つほどありました。が、少しだけサイズ(規格)が異なるようなのです。
スタッキングして収納効率を上げたいという思いから、
「同じサイズのものが2つ欲しいのですが、これはサイズ違いですか?」とお伺いしてみました。
すると飯田さんから、思いもよらないお答えが。
「それは一点一点サイズが違うよ。昔はきちんと規格やサイズを重視して作っていたんだよ。でも、もうやめちゃった。少し小さい方が女性の手に馴染むし、大きいのは旦那さんの手に合うんじゃない?それでいいんだよ、持ってみて決めてね」と。
サイズ違いで、並べると少しだけいびつ。でもとても暖かい雰囲気のかわいいそばちょこ。
今日聞いた金言を忘れたくない思いもあり、2つ購入しました。
結果、マグカップとして使ったり、小鉢として使ったり、そばちょことして使ったり…たくさんの用途で活躍してくれています。
収納時には、大きい方を下にしてスタッキング。少しだけ傾く収納になりましたが、それもまた味。
同じサイズのものを買えば、たとえ増えても収納にはあまり困らない。
重ねられて、しまいやすくて…
そんな思いばかりに囚われていましたが、食器は「しまうもの」ではなく「使うもの」。
使う時、手に馴染む感覚優先すれば、それでいい。
そんな基本的なことを思い出させてくれた、暖かい買い物体験でした。
帰り道にぜひ寄ってほしい「回廊ギャラリー 門」
「ひまつり」会場の笠間芸術の森公園から車で5分ほど、東京への帰り道にあたる道沿いに「回廊ギャラリー門」はあります。
静謐に佇むこのギャラリー、その名の通り一歩中に入ると、なんと内外が一体化した回廊型の建築なのです。
自然と調和した展示を見ていると、練り上げられ形成された焼き物は、元来土や砂などの自然物だったことを思い出させてくれます。
店内には笠間焼だけではなく、全国の焼き物がセレクトして置かれています。
ギャラリーという名前ですが販売がメインなので、ここでもお買い物が可能です。
祝祭の喧騒からひと時離れ、柔らかな自然光の中で焼き物を眺める時もまた一興。
植物と焼き物の組み合わせが素敵です。インテリアの参考にしたいディスプレイにもたくさん出会えますよ。
そんな充実した寄り道をしながら帰路へ。
あっという間に東京です。
家に着いたら、購入品を即興ギャラリーのように展示して眺めるまでがセットのわが家の笠間旅。今年も存分に楽しみました。
毎年開催されるので、ぜひ皆様も足を運んでみてくださいね。
ではまた!