第9回目は、インテリアスタイリストとして広く活躍中の窪川勝哉さんのお宅を訪問。中古物件を探しては自分好みに仕上げるのが趣味だという窪川さんに、自宅とは別に所有しているアトリエを見せていただきました。後編はこちら
ツレヅレハナコさんプロフィール
食と酒と旅を愛する文筆家・料理研究家。書籍、雑誌、WEBなどへの寄稿やレシピ提案だけでなく、調理器具のプロデュースなども手掛ける。『女ひとり、家を建てる』(河出書房新社)『まいにち酒ごはん日記』(幻冬舎)、『世界の現地ごはん帖』(光文社)、『47歳、ゆる晩酌はじめました。』(KADOKAWA)など著書も多数。
https://www.instagram.com/turehana1
窪川さん宅のプロフィール
住まいの種別:中古テラスハウスをリノベーション
築年数:67年
地域:東京都
床面積:約70〜80㎡(増築されているため正確な面積は不明)
施工会社:非公開
間取り:2LDK
家族:妻と二人暮らし
建築家・前川國男が手がけた白鷺住宅。住宅情報サイトで偶然見つけ、すぐ購入を決めました
ツレヅレハナコさん(以下ハナコ):初めまして! インテリアのプロが手がけた家と聞き、楽しみにしていました。玄関を入ってすぐ見えるお庭が素敵〜。
窪川さん(以下窪川):ここはアトリエとして使っている家で、家具や家電の使い心地を検証したり、仕事の撮影をしたり、時には友人を招いて食事をしたりしています。
ハナコ:なんと! ここは自宅ではないのですね。
窪川:中古物件をリノベーションするのが趣味で。大学時代に地元の山梨から上京して新築マンションに住んでいたとき、「新しい建物より好きに改装できるレトロな家が好きだ」ということに気づいたんです。それ以来、古い物件を買ってリノベ、を繰り返してきました。中古物件と車の情報をチェックするのが毎夜の日課。「SUUMO」は築年数が古い順で検索できるんです!
ハナコ:マニアックな情報! ご自宅はどんな感じなのでしょうか?
窪川:自宅もリノベテラスハウスです。若い頃に住んでいたテラスハウスが売りに出されているのを発見し、購入して手を入れました。このアトリエもそうやってリサーチして見つけたものです。
ハナコ:ここは建築家・前川國男氏が手がけた白鷺住宅なんですよね。まさかそんな家が普通にネットで売りに出されているとは…。
窪川:すぐに内見に行き、その日のうちに購入を決意。白鷺住宅は解体が進んでいるのですが、この棟は残ることが分かっていたんです。そんな付加価値があったのも決め手になりました。
リノベは、自分好みの内装とインテリアに仕上げる壮大なプラモデル
ハナコ:私も今の家を建てる前は、マンションをリノベするつもりで物件を探していました。でも、当時住んでいた賃貸物件のサイド光(キッチン横の窓から入る光)を再現できるところが見つからなかったんですよ。そのときリノベには限界があるなと感じたんですが、窪川さんは逆にリノベがお好みなんですよね。どんな魅力があるのでしょうか?
窪川:プラモデルをつくるのが好きな少年が大人になってつくる、壮大なプラモデルのようなところですかね(笑)。仕事で住宅やインテリアに深く関わっていますが、それは消費者や読者に広く受け入れられるビジュアルをつくるもの。だから自分自身の好みと異なる部分も多いんです。でも、自分の家なら何もかも好きに選べる。
窪川:あと端的に言えば、「言い訳できる」のが気楽なところ。戸建てにしてもマンションにしても、中古物件はどうしても変えられない部分があります。だから、何か不自由や不便なことがあっても「もともとこうだったから」と言い訳できる。注文住宅の場合はすべて自分で決めるので、責任も自分がとらなきゃいけない気がするんです。でも僕は、その不自由さもあえて受け入れていますね。「もっとこうしよう」「ここを変えよう」と思う部分があるほうが楽しいです。何もかも便利すぎると体が動かなくなってしまいそうで…。
ハナコ:なるほど。すでに土台があって、自分の好きなように変えていくという発想は私にはなかったな〜。私は家に求めるものがかなりはっきりしていたから、それを実現するためには戸建てを選んで正解だったのかも。
窪川:同じ中古でも、マンションと戸建てでやり方の違いはありますね。マンションは開口部を変えることはできませんが、戸建てならある程度自由が効きます。サッシや窓を好きに変えられるのは大きいです。
増築部分は小上がり風のリビングに。カーペットの青は昭和とモダンをつなぐ役割を果たしています
ハナコ:もともとはどんな間取りだったんですか?
窪川:2階建の2DKです。暗さが少し気になったので、2階の1部屋は床を抜いて吹き抜けにしました。開放的な空間になったと思います。
窪川:青いカーペットを敷いたリビングは、実は前の持ち主が増築した部分なんです。以前は和室になっていました。
ハナコ:増築! 今なら絶対にできないですよね。古い物件あるある。
窪川:この部屋はダイニングより3cm床が上がっていました。ならいっそのこともう少し段差をつけて、小上がりにしてしまおうと。リビングで床に座っても、ダイニングにいる人と目線が合い、会話もしやすいです。
ハナコ:床でくつろげるのはいい。床でゴロゴロしたいなぁ。庭を見ながらお酒を飲むのも最高でしょうね!