生活研究家・阿部絢子さんに伺う整理収納術もはや1年。そこで、今回はこれまでのエッセンスをまとめて読める総集編をお送りします。今年こそ、スッキリと片づいた家で快適な暮らしを目指しましょう

阿部 絢子

阿部 絢子

生活研究家、消費生活アドバイザー。整理収納から食、掃除など、生活全般に渡る知識を生かした著作多数。

http://ayakoabe262.jp/

「スッキリさせる」「好みを優先させる」のメリハリを

住みやすい快適な家づくりには、メリハリの利いた整理収納が欠かせません。阿部さん宅をモデルに見ていきましょう。

まず、玄関はお客様が最初に目にする場所。ここからリビングまではひと目で見通せる間取りだけに、一切よけいな物はありません。よく履いていない靴をたたきに出しっぱなしにしたり、宅配の荷物や回収に出す前のごみ袋をちょい置きしてしまいがちな場所ですが、基本的には何もない状態をキープするようにしましょう。

リビングは客間でもあるので、できるだけ物を置かず、テーブルも座卓にして開放感を演出。出しっぱなしにしても見栄えのする掃除道具をあちこちに潜ませ、気になる所をすぐ掃除できる工夫を欠かしません。

リビングに続いているキッチンも、カウンターなど目につきやすい部分は極力、物を置かずにスッキリ見せています。

一方、プライベートルームである奥の和室は、雑誌や新聞を読みやすくオープン収納したり、大好きな猫グッズを飾ったりと、本人の過ごしやすさを最優先させたインテリア。他人の目を気にせず、ホッとリラックスできる空間です。

このように空間の目的や役割に合わせて、「スッキリさせる」「好みを優先させる」とメリハリを利かせた部屋づくりをすることで、より家が快適になります。

しかし、自分の好みの部屋にするのは簡単でも、スッキリ部屋を作るのは難しいという人も多いのではないでしょうか。阿部さんが教えてくれたポイントは、「意地悪な友達の目線になって、家を見直す」こと。

「人間はすぐに見慣れてしまう生き物なので、散らかった家をそのままにしていれば、じきにゴチャついた部屋であるのがあたりまえになってしまいます。自分の目線で収納やインテリアを考えると、『まあ、これでいいか』と甘くなりがちなのです」

たとえば阿部さん宅の広い座卓には何も置いてありません。これが自分目線で使いやすいという思い込みを優先してしまうと、調味料やティッシュ、新聞などが際限なく置かれ、ゴチャついた部屋になっていってしまいます。

それを防ぐためにちょっと意地悪な友達の気分になって、その目線で家を見直してみること。日ごろ住んでいない人の目線なら実用性よりもまず見た目の美しさを感じるので、「よく見たら見すぼらしい」「これを出しっぱなしにしておくのは恥ずかしい」などと、新しい気づきが生まれるそう。こうして客観的に見ることで、より家の状況を把握しやすくなります。

「この作業を通してもなお『ここに置くしかない』と思う物があれば、そもそもそれは本当に必要なのか、いままさに使ってるいるのかということ自体を自分に厳しく問いかけてみます。どうしても必要と判断したならば、その物をその場所に置くことで『家族にとって危険ではないか』『インテリアに美しくなじんでいるか』といったチェックも行いましょう」

この作業を繰り返すことにより、本当にスッキリとした快適な空間に近づけるはずです。整然とするところは整然とし、リラックスするところはゆるめる。メリハリの利いた部屋は、住む人の気持ちを上手に切り替えてくれる、快適な家といえます。

全4回にわたり、阿部さんの整理収納法のエッセンスをお伝えしてきましたが、阿部さんが最も重視するのは 「どう暮らしたいかを常にイメージする」こと。

「数多くの家庭へ訪問しましたが、整理収納に困っている方は、大体において理想の暮らしのイメージを持っていません。だから、目の前のものにつられて購入し、積み上げてその時だけ満足してしまうのです。するとしだいに暮らしが荒れていき、部屋がざわついていくのです」

まずは、この家でどう暮らしたいかをイメージします。そのイメージと違うところから、片づけはじめるのです。

「仏教で『念願は人格を決定す、継続は力なり』という言葉があります。整理収納がニガテと思っても、理想の暮らしへのイメージを持ち続けることでしだいに行動まで変わっていきます。ぜひ、一生続けられる整理収納を考えてみてください」

(おわり)