毎日使うものだから、「好き」と「使いやすさ」のバランスを重視
整理収納アドバイザーの松尾千尋さんは人生の大半を団地で過ごし、今も夫婦ふたりで賃貸の団地暮らし。整理収納に興味を持つようになったきっかけは、コロナ禍でした。
「とにかくモノを減らしたい、という気持ちで本格的な片付けに着手しました。その中で、何を残して何を手放すのかをじっくり考えるうち、自分が好きなテイストが少しずつ見えてきたのです。アンティークや古道具にも惹かれていることに気づいたのは、2年前に団地暮らしを始めてから。古い団地での暮らしが心地よく、この雰囲気にはレトロなモノが合いそうだと思ったんですよね」
それと同時に、「見た目が100点のモノだけでは暮らしにくいかもしれない」とも思い始めたと言います。
「すべての持ち物において、見た目の好みと便利さ、実用性を両立させることはとても難しいです。佇まいがどれだけ気に入っていても、扱いに気をあまりにも気を使うようなら日常使いは難しい。予算と折り合いがつかないことだってあります。極端な話ですが、著名な陶芸作家が手がけた数十万円の器は、私にとっては高級すぎて、毎日食卓で気軽に使うことはできません。100%、自分の希望を満たすモノはそうそう見つからない。だから私は、見た目と実用性のバランスを意識したモノ選びを心がけています」
大切にしているのは、程よい生活感。わが家の雰囲気に合うモノを選ぶ
ビール好きの松尾さん、現在愛用しているタンブラー(写真右)は、見た目と使い勝手のバランスが良い一品だといいます。
「1年中キンキンに冷えたビールを飲みたいので、真空断熱構造で保冷力の高い容器を、使う直前まで冷凍庫に入れて使いたいんです。しかもほぼ毎日使うから、冷凍庫から頻繁に出し入れしても割れない耐久性もマストです。セラミック加工されたこのタンブラーはこれらの条件をクリアしていて、使い勝手と機能性が抜群なんです。欲を言えば、透明でビールの泡が見えるほうが、ビールそのものの美しさも楽しむことができてテンションが上がります。それに、もう少し薄張りのほうが、飲み口が私好み。もすべてを満たすアイテムはそうそう見つかりません。このタンブラーはビール以外にも使い勝手が良いということもあり、自然と手に取るようになっていました」
モノ選びのポイントは、部屋全体の雰囲気にマッチしているかどうか。出しっぱなしにしていても違和感がないことだそうです。
「生活家電、調理アイテムは、すべてこれを基準に考えています。直火・レンジ・グリル・オーブンなど幅広く使えるこの耐熱陶器皿(写真左)は、テーブルにそのまま出しても違和感のないデザインなので、とても助かっています。本当は、とっておきの器に盛り付けたいところ。でも、見た目が常に完璧な暮らしをしようと思うとそれなりの覚悟が必要だし、わが家は程よい生活感のある暮らし。そこに馴染むモノを選んでいくと、毎日が自然体で心地よくなることを実感しています」
キッチンは出しっぱなし収納を多用。フライパンはすぐ手の届く、見える場所に
そんな松尾さんの工夫が凝縮されている場所のひとつは、キッチン。団地らしい壁付きのキッチンは、使いやすさと全体の統一感のバランスが取れた空間に仕上がっています。
「お玉やキッチンばさみ、大さじ小さじスプーンなどは前面の壁に引っ掛けています。よく使うからこそ、しまい込むより断然使いやすいです。見せる収納にするものは、空間に馴染むデザインという条件をクリアしたものと決めています。色は黒やシルバーで統一し、落ち着いた空間になるように意識しています」
フライパンは、キッチンの背面に置いた棚につけたフックに吊るしています。ガスコンロの前から一歩も動かず持ち出せる位置です。
「以前はキッチンから1メートルほどの場所にある棚に伏せて置いていました。それほど不便に感じていなかったのですが、今のフック収納に変えてから格段に楽になりました。3歩歩いて取りに行くか、その場で取るか。たった数歩の差ですが、料理しやすさが圧倒的に違うということに、とても驚いています」
ちなみに、フライパンのフックは、100円ショップのものだそう。
後編では、松尾さん流の収納アイテムの選び方、家を片付けて起きた暮らしの変化などについて詳しくお話を伺います。
今回教えてもらったのは……

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松尾千尋さん
整理収納アドバイザー、ファイナンシャルプランナー1級の資格を持ち、家と家計をスッキリさせることが得意。インスタグラムでは、整理収納のあれこれやリアルな団地暮らしについて日々発信している。https://www.instagram.com/mer_chip310/