こんにちは、ひまわり工房暮らしの設計士 東沙織です。今回は押入れ収納がテーマです。お茶を片手に頭をほぐしつつコラムを読み進めていただければ嬉しいです。押入れがある家は、賃貸にも持ち家にも多いです。同時に、多くの人の悩みの場所でもあります。奥行きが深いぶん完全活用は難しいですが、モジュールを意識することでかなりの収納スペースを確保することができます。

東沙織

東沙織

1988年生まれ、兵庫県相生市出身。有限会社ひまわり工房取締役 暮らしの設計士。 設計思想は、『家事シェアできる家』・『らくちん動線の家』。適材適所の収納計画も定評あり。毎朝アイデア発信するインスタグラマー。

Q1 押入れって奥行きが深すぎて使いにくい! なんであんなに奥行きがあるの?

押入れは、日本の生活においては、長らく当然のように採用され続けてきました。一戸建てだけではなく、集合住宅でも同様です。
かつては「畳の床+布団就寝」だったので、どうしても家族分の布団を収納する空間が必要でした。幅が広くて奥行きが深く、家族人数分の布団を上に重ねられる収納が有効だったのですね。押入れのモジュールは、布団収納に特化したように考えられていたのかもしれません。(※諸説ありますが)

モジュールには地域差がありますが、今回は住宅での採用が多いとされる「関東間(かんとうま)モジュール」を例にして考察を続けていきます。

モジュールの基本についてはこちらから

押入れを作る場合、基本的には幅1m82cm×奥行91cmを1つの押入れとして構成することが多いです。毎日家族分の布団を出し入れする上で、合理的な空間でした。
また、高さ85~90cmに「中段」という横仕切り棚が計画されていることが多く、布団の出し入れに配慮した先人の知恵のカタチが今も残っていますね。
中段より下の部分の空間は腰をかがめないと使いにくいものですが、最近では、押入れモジュールにあわせた寸法の衣装ケースや収納ツールも数多く販売されています。組み合わせを慎重に検討しつつ採用すると有効活用できますね。

Q2 布団収納以外にはどう活用すればいいの?

布団を収納するために計画された押入れですが、収納用品の組み合わせ次第で収納場所として大きな力を発揮します。

中段を取り外し、引き出し式収納を取り入れて大型クローゼットとして使う

ハンガーパイプ+引き出せる衣装ケース+カラーボックスを使用した事例

押入れはクローゼットに比べて奥行きが深いため、引き出し式の収納用品を取り入れて、衣類関係を収納するのがおすすめです。
写真の事例は、リフォームで中段を取り払った事例です(赤丸の箇所)。ハンガーパイプには日常使いする洋服や長い丈の洋服を収納。下部部分には、トップスなど軽量で畳みやすい洋服を収納しています。押入れモジュールに合わせて奥行き65cmの衣装ケースを採用しています。
この事例のように、「吊るす収納」と「引き出す収納」という方法を採用すると、奥行きが深い押入れであったとしても、日常的に使用しやすくなりますよ。

中段を活かし、縦に区切ってスリムクローゼットとして活用

賃貸住宅で工事不可の場合の、押入れ収納の事例

この事例は、筆者の私が暮らすアパートの一室です。最近のアパートでは、従来の押入れモジュール91cmよりも浅めの、奥行き約60cmという寸法の押入れやクローゼットが増えています。賃貸住宅のためにつき固定棚を取り外すことはできず……私も長らく収納方法に悩んでいました。
そこでわりきって、ジャストサイズの収納用品を駆使しながら空間を3段階にわけて使用方法を変えています。
〇下段:ボトム・バッグ・アイロン等家電類の収納(「良品計画」のポリプロピレン衣装ケース」を使用)
〇中段:日常で着るトップス収納(「平安伸銅工業」のシンシュクオシイレハンガーを使用)
〇上段:季節物家電・布団収納(「イケア」のSKUBBを使用)

手前と奥で使用頻度に分けて、空間を使い切る

突っ張り式のハンガーパイプ+押入れ用伸縮棚で二列使用の事例

この事例は、手前を使用頻度の高い子ども用の衣類掛けとして使い、奥は季節家電や思い出など取り出す頻度が低いものを収納しています。吊り下げて取り出しやすくすることを意識しつつも、二列式にすることで奥まで収納空間を使っています。
後列に棚を設置する際は、(押入れ全体の有効奥行き棚の奥行き)−(手前に置きたいモノ)で計算して、スペースを割り出してから棚を選ぶと、無理なく収納スペースを使い切れます。

Q3 押入れをデスクのように利用する方法もある?

最近、テレワークが増えたことで、押入れをデスクにする人が増えているのを目にします。
この記事を書いているのは2020年11月。テレワークを採用する企業がますます増えていく世の中で、ホームオフィスを整備したいという声もよく耳にするようになりました。押入れをオフィスのようにデスク仕様にされる方もじわりと増えています。
実はわたしも10年前の学生だった頃、大きなデスクがほしくて……押入れをリメイクしてデスクにしてみたことがあるので、お気持ちがわかります。

押入れの中段、高さ85~90cmくらいの横仕切り棚をデスクにするこの構想は、一見合理的に思えますよね!ところが、高さ85~90cmというのは、デスクとして使うには少々高さが高いのです。パソコンを使う前提の場合、デスクの高さは「床から70cm前後」が最適だと言われています。もちろん、椅子の高さで快適性を調整する方法もあるのでNGとは言いきれませんが、高さの快適性解消のための作りこみが必要なため、DIYにチャレンジされる時は「中段の高さ」を熟慮してみてください。
一から棚の高さを変えられるようなDIYができる住宅の場合は、押入れを書斎のようにリメイクDIYする楽しみもありますね。

布団をしまう場所から、衣類・日用品をしまう場所へ

古くからある日本のモジュールとう考え方。以前は押入れといえば、布団をしまう場所でしたが、今は主に「衣類・日用品を収納する空間」へと変わってきていることを、私もますます実感しています。
ご自宅の押し入れをリノベーションする機会があれば、しまいたいモノを思い描きながら、中段や固定棚の有無や奥行きのサイズなどに向き合ってみると、空間を有効活用できますよ。

「もっとほかにもたくさんのアイデアが知りたい!」という方がいましたら…
今回のような暮らしづくり&家づくりのアイデアは主にInstagram(@himawari_kobo)やブログ(azumasaori.com)に掲載しています。手前味噌ですが、今や全国で共感の嵐が湧き、2020年11月現在は4万人を超えるファンの皆さんに関連するSNSをフォローして見守っていただけるまでになりました。よろしければ、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

今回のアイデアはここまで。
お届けいたしましたのは、暮らしの設計士「あず」こと東沙織でした。
ではまた、次のエッセイコラムでもお会いしましょう。