今回は、タイの断捨離ムービー「ハッピー・オールド・イヤー」を編集部がレビュー。
「断捨離」という言葉が流行してはや数年。その中でも「実家の断捨離」はかなり難易度が高いラスボス的存在です。親が暮らす実家を、娘が断捨離する…という構図からしても苦労は想像できますが、その先には意外な展開が待っていたのです。

HOUSTO 編集部

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母、兄との三人暮らしの実家。憧れの北欧ライフは実現するのか!?

憧れはミニマルな北欧ライフ。でも大きな壁は「いつか使うかも」「高かったから」と取ってあるモノたちです。ため息をついていても始まらない。新年の抱負「部屋を片付ける」を放置し続けて○十年、ついに重すぎる腰を上げる時は来た!

そんな決意をした人にぜひおすすめしたい映画が『ハッピー・オールド・イヤー』。タイの新鋭ナワポン・タムロンラタナリット監督の2019年の作品です。

主人公は、留学先のスウェーデンでミニマルなライフスタイルを学んで帰国したデザイナーのジーン。実家を理想的なインテリアのデザイン事務所にリフォームするべく、断捨離を始めます。ネットで自作の服を販売する兄、出て行った父を忘れられない母との三人暮らしの実家の片付け。文字だけでも多難な様子が漂いますが、果たしてうまくいくのでしょうか?

ゴールは白を基調にしたミニマムな空間。でも実態は…

映画の展開は、「STEP1 ゴールを設定する」など断捨離のプロセスとともに進んでいきます。確かに理想のゴールを決めておけば、途中で諦めそうなときも踏ん張れそうですね。ちなみにジーンの設定したゴールは、白を基調にしたミニマムな空間。スッキリした北欧風のデザイン事務所です。

しかしそこは実家。かつて父親が営んでいた音楽教室兼自宅の小さなビルの中は「ザ・実家」としか言いようのない空間で、いつ、どこからやってきたのか分からないモノたちがぎっしりと詰まっています。そんな光景は、みなさんも見覚えがあるのでは?

ジーンは黒いゴミ袋を山ほど買い込み、「STEP2 思い出に浸らない」「STEP3_迷わない」を合言葉にどんどん捨てていきます。いらないモノは万国共通で、古い雑誌、旧石器時代から存在していそうな携帯電話、VHSを巻き戻すためだけの機械など、さすがにもう使わないだろうというモノたちを迷いなく断捨離! 黒いゴミ袋が次々といっぱいになる様子は爽快!

映画の中の断捨離で心強いのが、ジーンが「兄さんも手伝って」と巻き込んでしまう兄の存在。そこまで乗り気ではなさそうですが、ジーンがくじけそうなときは支えてくれます。自分だけでは進められないと思ったら、誰かに手伝ってもらうのもいい手かもしれません。

断捨離のハードル。借りっぱなしのモノ、プレゼント…

順調に見えた断捨離。でもある日、壁にぶつかります。きっかけは「私の贈り物、捨てるの?」という友人のひとこと。そう、捨てられないモノにはそれなりに理由があるのです。「迷わない」と一度は決めたジーンも立ち止まって考え、洋服やレコード、楽器など、友だちから借りっぱなしだったものを返して回ります。

最大のハードルは、元カレから借りていたカメラ。ジーンは思い出に向き合うことを決意し、彼に会いに行くことにします。予告編では彼に「連絡せずに消えてごめん」というシーンも。さらに今カノの存在も明らかになり、元カレとの関係がどうなるのかも気になるところですが、それは映画の本編で見届けてください!

考えさせられるのは、モノとの付き合い方。片付いていないのはモノではなく、そのモノにまつわる思い出だったのかもしれません。

「何を捨て、何を取っておく?」ということが、この映画のテーマの一つ。モノであふれた実家を舞台に、元カレとの関係を中途半端にしたままのジーンは、同じように父の思い出を捨てようとしない母と正面から向き合います。散らかったモノは「使わないから」そのままになっているのではなく、「見たくない」「考えたくない」から放置している感情でもあるのです。

散らかっている部屋が落ち着かないのは、モノが多いことが理由なのではなく、「未処理」が溜まっている状態だから。モノを捨てれば終わるのではなく、向き合ってこなかった感情にも一区切りつけることが、断捨離なのかもしれません。

ジーンは断捨離で心を乱しながらも、新しい感情に出会っていきます。果たして断捨離はきちんと終わり、笑顔で「ハッピー・ニュー・イヤー」と言えるのか? ぜひ映画をお楽しみください!

断捨離の基準は人それぞれ

さて、モノとの付き合い方を改めて考えるきっかけをくれた映画を観た後に、筆者も自分の家の捨てられないモノを改めて見直してみました。魔窟のような引き出しを開けると、出るわ出るわ、思い出の品ばかり。

たとえばこの石は、一見ただの丸い石だけど、友人と夏の河川敷で拾った石。私の手のひらの石を友人はふいに掴み、「パワーストーンとしてはレベル3」と認定し、素敵な笑顔を見せたのでした。レベル3がどれほどのパワーなのか、そのギャグセンスはどうなのか、いろいろ分からないけれど、なんだか楽しい夏の一日の思い出を連れてくる石です。

ほかにも、失恋して友人と行った神社で引いた大吉のおみくじ、友人との旅先でおつりに混ざっていたギザ10(知ってる?)、友人が深夜のファミレスで唐突に「スプーン曲げできるんだ」とねじ切ったスプーンの先など、捨てられないモノにはストーリーがいっぱい。改めてモノを眺めていると、自分が捨てられなかったのは友人たちとの時間だったのかな、という気がしてきました。

断捨離の基準は人それぞれ。みなさんも改めて捨てられないモノを見直してみれば、新しい発見があるかもしれません。

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