映画『断捨離パラダイス』あらすじ
ピアニストとして将来を期待されていた白高律稀は、ある日突然、原因不明の手の震えで、キャリアを絶たれてしまいます。ピアノを弾くことしか知らなかった彼が選んだまさかの就職先は「断捨離パラダイス」。たまたまチラシで見つけたごみ屋敷専門の清掃業者でした。
ピアニストという華やかな世界から一転し、想像を絶する“汚部屋”でごみの山と格闘する日々。さまざまな事情を持つ部屋の持ち主と出会ううち、律稀の心の奥でわだかまっていた何かがゆっくりとほどけていきます。
オムニバス形式の6篇のエピソードで「捨てられない人々」をリアルかつコミカルに描くこの映画。ごみに埋もれたごみを発掘し、掘っても掘ってもまだごみが出てくる。まるで歴史を物語る地層のように重なったごみは、少し散らかり気味の我が家とはレベルの違う散らかり方なのは一目瞭然です。
片付けるのは不可能に思えるごみ屋敷でも、断捨離パラダイスのスタッフにかかればお手のもの。
依頼者のために「捨てるもの」と「迷うもの」を分類するための2つのボックスを用意したあとは「明らかにゴミと分かるものはボクたちが捨てていっちゃいますので〜」と、有無を言わさず片付けていきます。
ガンガン断捨離を進める様子は、痛快そのもの。自分のおウチも片付けたくてウズウズしてきますよ!
ニュースで見るような「ごみ屋敷」。内側に入ると見えてくる事情とは…
ごみ屋敷のなかでもモノの量が圧倒的に多いのが、泉谷しげるさん演じる金田繁男の一軒家です。
駐車場まであふれ出したごみ袋にも「これは資産だっ!」の一点張り。片付けを求める近隣住民とトラブルになった様子がテレビで放送され、断絶していた息子の依頼で片付けが始まります。
ごみの山のなかに実はかなりの値打ちモノが紛れていると分かり、宝探しの様相を呈してくるお片付け。誰が最初にお宝を発見するのか!? その思いもよらない結末は、ぜひ映画をご覧ください。
片付けられない事情は人それぞれ
小学校の息子の家庭訪問を頑なに拒むシングルマザー、恋人を部屋に招けない小学校教諭、故郷を離れて介護士として働くフィリピン人男性。さまざまな持ち主の“汚部屋”を、断捨離パラダイスのスタッフは次々と片付けていきます。
ふと気がつくのは、「ごみ屋敷」とひとことで言っても、散らかり方は人それぞれで違うこと。忙しくて掃除をする時間がないとか、片付ける習慣づけができていないとか、そんな簡単な理由ばかりではないようです。
片付けの進むなかで垣間見えるのは、依頼者たちが心に抱える心の痛み。大切な人を失ったり、こどもの頃のトラウマがあったり――。モノを捨てられない人には、その人なりに理由があるのです。
悲しみや喪失感を抱えながらも、部屋を片付けようと立ち上がり、何を手放すかを決意していく姿には、胸が熱くなります。
持ち主の「捨てたくない」を否定しない。断捨離のポイント
そんな人たちに寄り添うのが、断捨離パラダイスの面々。
とくに社長は、破天荒でなんだかテキトーだけど、人情味あふれる温かい人。無慈悲にモノを捨てていくように見えて、片付けられない人のことをぜったいに否定しないのです。
ごみの山の中身は、絶対に賞味期限が切れている食品だったり、こどもの目にはふれさせたくないDVDだったり、捨てた方がいいと思えるものばかり。でも依頼者は「私には大切なもの」だと言います。
確かに、大切なものの基準は、本人にしか分からないもの。その気持ちを尊重する断捨離パラダイスの社長やスタッフだからこそ、依頼者の間に信頼関係が生まれ、片付けも進むのかもしれません。この方法は、家族のものを片付けるときも覚えておきたいポイントですね。
社長やスタッフと接するうちに依頼者の心境が変わっていくのも、この映画の見どころ。何かに導かれるようにここで働くことを決意した主人公の律稀も、少しずつ前向きな気持ちを取り戻していきます。
断捨離が済んだ依頼者の顔は、みんな晴れやか。手放すものを決めていく作業は、心を整理することでもあるのかもしれません。
片付け終わったお部屋を再びごみだらけにしないため、「できるだけ人を家に招いてください」という社長からのアドバイスは、ぜひ実践したいもの。断捨離前のモチベアップにも役立ちそうな映画です。
映画情報
- 断捨離パラダイス(2023年/日本/日本語/カラー/101分)
- 監督・脚本 萱野孝幸
- 出演 篠田諒、北山雅康、武藤十夢、中村祐美子、泉谷しげる、関岡マーク
- 製作 濵田優貴
- 配給 クロックワークス
- https://danpara.jp/