HOUSTO編集部が「今、気になる本」をシェアするストレージレビュー。今回は絵本作家・挿絵画家ターシャ・テューダーの名言を集めた本をご紹介します。
絵本作家、ガーデナーとして活躍したターシャ・テューダー

ターシャ・テューダーはアメリカの絵本作家。約100点の絵本を出版していますが、自然と動物を愛した生き方とその暮らしぶりも注目されていました。ガーデナーとしてもよく知られているので、庭いじりが好きな方の中にもターシャファンは多いはず。2008年に92歳で亡くなって以降も、ターシャのライフスタイルやガーデンについて綴った本が出版され、映画公開までされているほどです。
今回取り上げる『ターシャ・テューダー 幸せの見つけ方』もそのうちのひとつ。ターシャの絵本を翻訳していた著者の食野雅子さんが、ターシャの残した言葉を綴る内容となっています。
ターシャの元を何度も訪れ、個人的にも親交が深かったという著者。実際にターシャから聞いたというエピソードも披露されています。
「私が絵を描くのは、生活のため。そして、もっともっと球根を買うためよ」ターシャはロマンチストであり、リアリスト。
この本では絵本制作、家事、老い、庭づくり、愛、子育てとさまざまな角度からターシャの名言をピックアップ。
「私は、自分も楽しみ、人も楽しませる人生を生きたいと思ってきました。」
「想像は、心の栄養。生きるためになくてはならないもの。」
など、心に響く言葉の数々が収録されています。19世紀の農家の暮らしに憧れ、最後のときまで自然と寄り添う暮らしを送ってきたターシャの人生。その経歴だけを見ると、夢を追い求めた究極のロマンチストのように思いがちです。
でも本書に出てくる言葉を見れば、現実とうまく折り合いをつけていたことがよく分かります。例えば絵を描くのは想像力が発揮できていいですね、とファンから言われたターシャが「とんでもない。私が絵を描くのは、生活のため。そして、もっともっと球根を買うためよ」と話したというエピソード。
離婚を経験しているターシャはひとりでこども4人を養わなければならなかったので、自分がやりたいことと、食べていくための仕事を分けて考えていたのでしょう。また年を重ねることについては嫌だと思ったことはないものの、現実を受け入れて今に目を向けなければ、と冷静に受け止めています。飼っていたヤギは85歳で手放し、畑やガーデンも少しずつ縮小しているのです。
できなくなったことを嘆くより、今の年齢でできることを楽しみたい
私たちの暮らしにも、「現実はそう甘くない」と思う場面がたくさんあります。好きなものや人だけに囲まれ、好きな仕事でお金を稼ぐことができたらどんなにいいか! 自分の境遇を恨み、他人が羨ましく見えることも多いですよね。特にSNSが浸透した現代では、隣の芝が簡単に覗けてしまう環境です。
側から見れば夢のようなスローライフを送っていたように見えるターシャも、現実はしっかり受け入れていました。でもターシャが他の人と違うのは、どんな環境であってもその中で幸せを見つけていたこと。
「今は、人生でいちばんいい時」で、「現実は往々にして夢とは一致しないけど、私は自分の選択に悔いはないわ」と話しています。ターシャが終の住処となるバーモント州に移り住み、新たに庭づくりを始めたのは56歳。それに比べたら、私たちにはまだまだ若い! 今からでもやれることがたくさんあるはずだと気づかされます。
「できなくなったことを嘆くより、今の年齢でできることを楽しみ、新しいことに挑戦してみて」というターシャの言葉。みなさんのよりよい2025年のスタートにふさわしいのではないでしょうか?
書籍情報

ターシャ・テューダー 幸せの見つけ方
食野雅子 著
河出書房新社
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309031408/