リフォームやリノベーションは、家事動線や収納を見直し、より使いやすくアップデートする絶好の機会。整理収納アドバイザーの水谷妙子さんは、自身が関わった義実家のマンションリフォームで、可動棚の設置を提案したそうです。設置箇所のビフォーアフターや使い勝手、選んだ理由などについて詳しくお話を伺いました。
今回教えてくれたのは…水谷妙子さん
「無印良品」で生活雑貨の商品企画・デザインを13年間務めたのち、現在は整理収納アドバイザーとしてお片づけ講座開催、書籍出版やテレビなどで活躍。
義母ひとり暮らしのマンションをリフォーム。玄関と洗面所に可動棚を設置することに

リフォーム前の玄関の様子
メディア出演や片付けセミナー開催など、多方面で活躍中の整理収納アドバイザー、水谷妙子さん。現在、義実家マンションのリフォームを段階的に行っているそうです。
「ひとり暮らしの義母が便利かつ安心して暮らせるよう、まずは玄関や水回りの一部をリフォームしました。工事の手配は私たち夫婦でサポート。築年数が経っている物件だったので、施工会社選びは経験を最優先しました。同じマンション内で過去2件手がけた実績があり、現在も2件進行中だという会社に依頼。建物の構造をすでに理解していて、管理会社への手続きや組合とのやりとりにも慣れていると思ったからです」
浴槽など古い設備を交換し、玄関は古い靴箱や既製の収納棚を撤去。靴を始め玄関まわりで使いたいものの収納をどうするか、家族で話し合ったそうです。
玄関にはハンガーパイプと棚板を半分ずつ設置。引き違い戸で隠して見た目もスッキリ

リフォーム後の玄関の様子
既製の靴収納家具を設置する、棚を造作するなどいろいろな選択肢を検討した結果、水谷さんたちが選んだのは可動棚でした。
「想定していた収納スペースは幅1300mm。もともと玄関は狭く、奥行きもあまり取れません。既製品ではスペースを最大限に生かせる、ぴったりの収納家具を見つけられませんでした。それに、据え置きの家具は地震による転倒も怖い。でも、可動棚ならスペースに合わせて棚柱を設置できるし、倒れてくる心配もありません」
玄関に収納したいと考えていたモノは、靴や上着のほかに掃除道具、避難時の持ち出しバッグ、シニアカートなどでした。以前は入りきらず、三和土や廊下に出しっぱなしになっていたものもあったそうです。
左側はパイプハンガーで衣類&掃除用品の収納スペースに
「これらをすべて収納できるよう、スペースの左側にはハンガーパイプを上下に2本設置。レインコートの着丈に合わせて下段のパイプを調整し、掃除道具を取りやすい高さに設置しました。ハンガーパイプがあるとフックで引っ掛けられるのが良いですよね。フロアワイパーやカーペットクリーナーの柄も、パイプに立てかけて収納。倒れないようにして支えられるのは、思わぬメリットでした」
右側の靴収納スペースには可動棚を10段取り付け
棚柱は左右合計4本。左右それぞれの幅は同じにしてあるので、後から左側のハンガーパイプを右側につけ変えたり、右側の棚板を左側に移動させたりすることもできます。
「完成後にいったんモノを収納してみてから、やっぱりここに◯◯を置きたい、移動させたいと義母から細かなリクエストが新たに出てきました。当初、右側はすべて棚板を入れて靴置き場にしようと思っていましたが、右側下段にショッピングカートを置きたいという要望を受けて棚板1枚を左側へ移設。後からいくらでも微調整できるところが、可動棚の大きなメリットだと感じています」
玄関をスッキリ見せるために、引き違い戸をつけて隠せるようにしました。

左:左の戸を開けた様子、右:すべて閉めた様子
費用は、棚板10枚、ハンガーパイプ2本、棚柱などのパーツ、下地製作や壁紙代などを合わせて10万円ほどだったそう(造作の扉製作代、工賃は除く)。
洗濯機横の可動棚は、室内干しの洗濯物をかけるために設置

リフォーム前の洗濯機横スペースの様子

リフォーム前の洗濯機横スペースの様子
洗面台から独立させて新たに設置した洗濯スペースにも、可動棚を設置。ハンガーパイプ2本を用意しました。室内干しの服をかけるためのスペースとして想定したそうです。こちらも既製品のハンガーラックなどではなく可動棚を選んだのは、高さを微調整できるようにしたかったから。
「義母が服をかけやすい高さ、そして服の着丈を考慮して、後からハンガーパイプの位置を動かせるように考えました。図面を見るだけではイメージしづらいし、使っているうちに“もう少し低くしたい”という希望が出てくるかもしれない。もしかしたら、ハンガーパイプ1本のほうが使いやすいと感じるかもしれない。後でどうとでもなるように選びました」
ちなみに洗濯機上の吊り戸棚は、洗剤などの細々した生活用品を収納するためのスペース。これらは扉で隠せたほうが良い、という義母の要望を尊重しました。
費用は、ハンガーパイプ2本と棚柱などのパーツ代で2万円弱です(下地製作、壁紙代は除く)。
入れるモノが変わったら棚板を動かせる。変化に強いことが可動棚最大のメリット
可動棚は、リフォームが完了した段階で収納を完璧に整えておかなくても良い、というのが大きなメリットだと水谷さんは言います。
「私は常々、収納に完成はないと思っています。暮らしながら、実際に使ってみながらモノを動かし、その時のベストな使いやすさを探っていくのです。持つモノの内容や量は変動するものだし、使いやすい高さだって年齢で変わっていく。今回のリフォームの場合、主に使うのは義母です。だんだん高いところに手が届きづらくなることもあるだろうし、様子を見ながら変えられる余地を残しておきたかった。それが、可動棚を選んだ一番の理由かもしれません」
棚板の高さを変えたり、場合によっては棚板の数を増やしたり減らしたり。住みながら、状況に合わせてより使いやすくアップデートできるところが利点です。
いっぽうで、可動棚をあえて選ばなかった箇所もあります。
「押入れは天井高が2500mm、奥行きが1000mmとスペースが大きすぎて、どう使えばいいかとても悩みました。奥行きが深いと、奥のモノが取り出しにくくなるからです。ここには洋服をたくさん掛けたい、という義母の要望があり、手前と奥に前後2列でハンガーパイプを設置することに。ですが、可動棚だと掛けたい服の数に対して耐荷重が不足する可能性があったため、固定式のハンガーパイプを設置しました」
可動棚が向いているのは、置くモノや量が変化しやすい場所。逆に向いていないのは、重いモノを収納する場所や奥行きが深すぎる場所。水谷さんたちは、これらを考慮して設置場所を考えました。今後も定期的に、使いやすさを見直して微修正していくそうです。
これからリノベやリフォームを検討している人、可動棚の設置を考えている人はぜひ参考にしてみてください。