もうすぐ夏休み。中学受験に挑むこどもたちの夏期講習がはじまります。4、5、6年生と学年が上がるたびに、スケジュール・内容ともにハードになっていく夏期講習。3年間、毎夏が天王山と呼ばれるこの時期をのりきるコツは、やはり普段からの“片づけ”にあり! 長男が関東トップクラスの私立中学校に合格したMさんに聞きました。
中学受験生の親の役割は、情報と紙類の「交通整理」

前回、リビング学習と収納ルールについて教えてくれたMさんは、関東御三家の男子中学校に通う長男、中学受験塾に通う小学生の次男、そして末っ子の長女(小学生)の3人きょうだいのママ。
中学受験は親の関わりがとても重要とされますが、その役割の多くが「テキストとプリント類の整理」だといいます。
「塾にもよると思いますが、中学受験のテキストとプリントの量は、本当に膨大です。長男の受験を経験してみてつくづく感じたのは、親のサポートは『交通整理』のようなものだということ。塾ではたくさんの課題や解説のプリントが渡されますが、すべて取り組むことは不可能。ある程度割り切って、やる・やらないを仕分け、優先順位をつける……そんなことが自分でできる小学生は、ごく稀だと思います。
こどもの学習進度、理解度に合わせて取捨選択をして、こどもの頭のなかと、目の前の紙類の『渋滞』を防ぐというイメージです。どこかが詰まってボトルネック状態になってしまうと、次々と増えていく課題をこなすことができず、本人の負担も増えてしまいます。限られた時間のなかで、本人にとって一番効率的なやり方を模索するのは、やっぱり親の仕事なんですよね」
多くが4年生クラス(3年生の終わりくらい)からスタートする長い中学受験生活の中でも、毎年の「夏期講習」は、親にとっても一つの山場だとMさん。
「夏期講習では、週に2、3回のペースで行っている工程を、4連日などでこなしていきます。テキストの量も、普段とほとんど変わりません。平日なら2日くらいあった仕分け猶予が、半日にも満たなくなる。ここでペースが崩れると、『こなせなかったプリントの山』が溜まり、ストレスも増大します。そのプリントの山が机の上でどんどん大きくなっていったら……大人でも嫌になりますよね。学習する場所をきれいにして、プリント類も整理しておけば、次に何をすべきかが明瞭になり、視覚的にも安心感が生まれると思います」
夏期講習がはじまる前までに、平常時のテキスト整理のルールを決めておくことが、過酷な期間をのり切るコツだと教えてくれました。
スケジュールを明らかにすることがテキスト整理の第一歩

塾のペースに慣れてくると、毎週こなす宿題の量もわかってきます。まずは1週間のスケジュールをきちんと立てることが、テキスト整理の第一歩だそう。
「ホワイトボードなどで管理をされている親御さんもいらっしゃいますが、私は『スタディプランニングノート』がおすすめです。東大クイズ王で有名なQuizKnockがGakkenと共同制作したもので、1週間見開きになっています。日課はその都度書き込めばいいと思いますが、大切なのは、一週間の目標をきちんと書くこと。前の週に取りこぼしたことも明らかにしながら、今週は何に重点を置くか、そこは息子ときちんと話しながら書くようにしていました。長男の場合は、6年生の途中から自分でプランするようになりました」
ノートにはカレンダーもついているので、テストのある日をスケジューリングして学習計画が立てられます。
「テスト範囲も書いておき、テストが近づいたらカウントダウンの日数を書くようにしていました。1ヶ月、1週間単位で可視化していくと、こどももいつまでに何をやるべきか、自分で意識するようになると思います」
塾のある日・ない日のルーティーンがあれば、こどもも自然に動く

塾のある日・ない日のルーティーンも習慣づけていきたい、とMさん。毎日、あらかじめダイニングテーブルにその日のテキストをまとめて用意しておくそうです。
テキスト類の一番上に、プランニングノートを。塾のある日は、まずプランニングノートを確認し、テキストを見直してから、軽くおやつを食べて、塾に出発するという流れです。
「おやつを置いておくことで、まずはテーブルにやってきます(笑)。移り気なこどもにとって、いつものルーティーンがとても大切だと思っています。目の前に揃っていれば、あちこちテキストを探し回ることもなく、すぐに勉強に取りかかることができます」
塾のない日も、その日やる宿題を同じようにまとめてダイングテーブルに。学校から帰宅したら、遊ぶ時間をつくって少し余裕を持たせてから、おやつを置くと、すぐにテーブルにやってくるそう。そしてそのまま、自然と学習に入っていきます。
「そして塾から帰ってきた夜は、リュックからすべてのテキストとプリント類を自分で出してもらいます。その日の小テストの結果を確認したら、その日に何を学んだかをこどもから説明してもらいながら晩御飯。特に社会や理科は、この親子の会話がとても有益だと感じます」
テキスト、プリント類は100均の紙製ファイルボックスで管理

「夜、塾から戻ったら、その日のうちにテキストを教科別に整理。100均の紙製ファイルボックスを利用しています。テキストとプリントは、特に綴じたりすることはありません。恐ろしいほどたまっていくのでなるべく手間をかけず、ファイルボックスに順番に投げ入れ式にしています。」
あえて本棚などを置かず、100均のファイルボックスだけでコントロール。ボックスは教科ごと、またテスト・演習プリント類はクリアファイルにひとまとめにしてボックスへ。あまり細かく分けすぎないことがコツだそう。その時に使うものだけを厳選して、循環させていくことで、モノと知識の渋滞を防ぎます。使い終わったテキストはまとめて、別の場所に整理しているといいます。
「ファイルボックス自体、軽いこともポイント。受験生の次男は普段ダイニングテーブルで勉強することが多いので、ダイニングの足下にテキストを置くことが多いですが、カウンターテーブルに移動して勉強するときは、その近くに置くなど、勉強の場所に合わせてフレキシブルに置き場所を変えられます。お客様がいらっしゃる時もすぐ別の場所に隠せるので便利です(笑)」
「いつものモノがいつものところにある」安心感が、学習意欲につながる

まだまだ幼い小学生にとって、学習への動機づけは、「安心感」が大切だとMさんは言います。
「大人もそうだと思うのですが、集中して何かをしようと思うとき、その場所がごちゃついていたら、気が散って、やる気も削がれますよね。テーブルの上にテキストがきちんと揃っていて、そのほかにはモノがない状態は、こどもにとっても心地がいいのではないかな、と思います。その心地よさから、安心して勉強に集中できる。今は親の手助けが必要ですが、大きくなれば、自分で整理するようになります。親がやってしまったら片づけない子になるのではないか、という意見もありますが、『きれいじゃないとやる気が起きない』という習慣がつけば、しめたものかな、と。実際に長男も中学生になって、やはり散らかっていると集中しづらいということで、勉強する前に片づけるという習慣が身についています」
厳しい夏期講習がはじまる前に、こどもと一緒に、スケジュールと片づけのルーティーン化を!……とはいえ、
「大人が急にルールづくりだけをすると、こどもも混乱すると思うので、話し合いながら、一つずつ、ゆっくり定着させていけたらいいのでは」
Mさんはそうアドバイスしてくれました。
次回は、さらにプリント類が混迷を極めるカオスの受験直前期、どう立ち向かえばいいのか……について、お話を伺います。お見逃しなく!