今回グリーン・コーディネーターの新井奈緒子さんが向かったのは、湘南の海沿いに建つマンション。「もっとグリーンを増やして、爽やかなインテリアにしたい。また、ハーブも枯らさず育てたい」という相談者の要望に応えて提案したのは、ベランダを活用するテクニックでした。
「フィトセラピスト」が暮らす、海沿いのマンションへ

マンションは、その気密性の高さや日照条件により、戸建住宅に比べてグリーンを育てるのが難しいとされています。今回の相談者、松井依里さんが暮らしているのは、湘南のマンションの2階。南側は松林の向こうに海があるシチュエーションです。シェルフにはいくつものインテリア・グリーンがまとめられ、パッと見、上級者の印象です。ベランダは東向きで、隣にある邸宅の大きな庭がいい借景になっています。
松井依里さんはフィトセラピスト(植物療法士)・ハーブティーソムリエとして湘南を中心に活躍中。精油、ハーブ、フラワーエッセンスを使い、植物の力で体のバランスを整える暮らし方を伝えています。ハーブを蒸留させて、化粧水などスキンケア用品を手作りすることも。
本当はもっとフレッシュなグリーンのボリュームを増やしたい

まずは、室内全体を見せてもらい、奈緒子先生のグリーンカウンセリングからはじまりました。
奈緒子先生:室内のインテリア・グリーンがとても上手ですね! きちんと手をかけて育てていらっしゃるのがよくわかります。
松井さん:ありがとうございます。これまでいくつも枯らしてきたんですよ(笑)。残っている子たちが、この部屋の環境に合っているのかな、と思っています。ドライのリースを活用したり、いろいろ工夫はしているんですが、本当はもっとフレッシュなグリーンのボリュームを増やしたいんです。でも、リビングで教室も開いているので、部屋が狭くなるのは困りどころ。賃貸なので、フックをつけて吊るすのも難しくて、どうしたものかと。また、仕事柄、ハーブ類もたくさん育てたいと思っているんですが、何度か失敗しているので、手を出しづらくて……
奈緒子先生:なるほど、わかりました。事前に送っていただいた室内写真から、いくつかグリーンを用意しました。ハンギングは軽いものにして、できるだけベランダを活用しましょう!
松井さん:えっ、ベランダですか。ベランダは、室内以上に枯らしてきたので、ちょっと心配……
奈緒子先生:選び方と、置き方に工夫をすれば大丈夫。さっそくやってみましょう。

提案のグリーンをたくさん持ち込んできた奈緒子先生。さっそくベランダ改善計画をスタート!
ベランダを部屋の拡張として考えて、グリーンで奥行きを出す

奈緒子先生は、ベランダに大きめの鉢を増やすことを提案しました。
奈緒子先生:白い鉢には、ホワイトセージとレモンマートルを寄せ植えしてあります。それからローズマリー(左)と、ハーブではありませんが、アスパラガス スプレンゲリーの鉢(中央奥の鉢)も持ってきました。アスパラはボリュームが出るし、強いので、ベランダの賑やかしにはぴったりです。
松井さん:すごくいいセージですね、このサイズの鉢でハーブを育てることは考えたことがなかったです。
奈緒子先生:売っているハーブは、小さい苗が多いですからね。でもやっぱり小さいと、弱いんですよ。値段は少し張りますが、ベランダで育てるなら、大きめの苗を選ぶといいと思います。

松井さんが育てていた小さなハーブ。「ハーブは直射日光に弱いので、日が差してきたら日陰に移動させてあげて」と奈緒子先生。

大小の鉢で、見た目もリズミカルに。
松井さん:ベランダに直接鉢を置いてしまうと、枯れやすくなりますよね。以前はすのこを敷いていたんですが、虫がわくのが怖くて、捨ててしまいました。
奈緒子先生:気になるなら、動かしやすいレンガや椅子などで置くといいですよ。高低差で見た目のバランスがよくなりますし、暑さ対策にもなります。

ベランダ側から眺めたところ。アスパラ(右側)のボリュームがいい雰囲気です。
室内には一つアクセントグリーンを増やして。室内・ベランダ・借景で3段階のグリーンを楽しめる

奈緒子先生が「室内に置いてみては」と持ってきたのは、大きめのシダ「ミクロソリウム スコロベンドリウム」。マンションでもよく育ち、見た目もゴージャスなグリーンです。
奈緒子先生:室内からベランダを眺めると、両側にグリーンのアクセントが、高低差のあるベランダのグリーンがあって、その抜けた先に借景の緑。これでグリーンの奥行きが出て、ずいぶんバランスが整ったと思います。
松井さん:本当だ、すごい! 少し増やしただけで、こんなに雰囲気が変わるなんて……
奈緒子先生:ベランダには、もう少し多肉の寄せ植えを追加したり、室外機が気になるなら、木製のカバーをすると、もっと見栄えがよくなると思いますよ。

この通り、リゾート感も倍増。眺めているだけで気持ちのいい空間ができあがりました。

フィトセラピーの教室風景。背景のグリーンが生きています。後日、「生徒さんたちからもとても評判がいいです!」と松井さんからメッセージが届きました。
奈緒子先生:松井さんのお宅のように借景がなくても、ベランダのグリーンを増やすことで雰囲気を変えることができます。アウトドアリビングを作る感覚で、ベランダのグリーンを取り入れてみてくださいね。
次回は、マンションの室内とベランダでグリーンを長持ちさせるお手入れのコツを中心にお伝えします。