こども部屋は2階にあるけれど、小学6年生はリビングで遊びと勉強に集中! 福井県で暮らす大森治幸さんと妻、宇宙飛行士を目指す息子・陽生くんの3人家族の家では、学習机でもダイニングでもなく、リビングの中央にドーンと置かれた大きなテーブルが学びの拠点です。「研究室」と名付けられたその机で、陽生くんは塾なしで自ら学び続けています。壁一面に広がる世界地図や星座図、家族で共有する本棚、カラフルなボードゲーム。そして、スマホを見ずに過ごす親子の時間。「自走する子」を育てた空間づくりと、家族で過ごすリビングの工夫について、父と子、それぞれの視点から語ってもらいました。
今回教えてもらったのは……大森治幸さん(父)、大森陽生くん(子)
大森治幸さん(父)『みるみる自走する! 子育てはリアクションが9割』(新潮社)著者。福井県在住。全国紙の新聞記者を経て、現在は福井県内で公務員として勤務。「世間の常識や年齢にとらわれず、どんな興味も全肯定しておもしろがる」という教育観を持つ。一人息子の陽生くんに対して「勉強しなさい」と強制せず、日常の言動に全力で「リアクション」することで自走力を引き出す新しい子育てを実践中。
大森陽生くん(子)現在小学6年生。塾なし・完全な独学で、数検準1級(理系高校数学III・Cレベル)と英検2級(共通テスト8割レベル)を取得。宇宙への造詣も深く、テレビ番組『サンドウィッチマンと芦田愛菜の博士ちゃん』に「宇宙博士ちゃん」として出演。将来の夢は宇宙飛行士。麻雀も好きで、「月面で最初に麻雀をした人」を目指している。
リビングの真ん中にある「研究室」
福井県で暮らす大森さん親子の自宅は、小学1年生の時に引っ越した3LDKの戸建て。2階に、いずれはこども部屋となる予定のスペースはありますが、現在は半分物置状態だそう。陽生くんが毎日を過ごすのは、リビングの真ん中にドーンと置かれた大きな机です。
「僕は、この机を『研究室』って呼んでいます。特別感が欲しかったので」(陽生くん)
研究室と名付けたのは陽生くん自身。小さい頃から工作が好きで、この机で手を動かして遊んでいました。自然と、勉強や読書をする場所へと変化していったそうです。
「前はこたつテーブルを使っていたんですけど、5年生の時に今の大きな机に買い替えてもらいました。大きいから、より勉強しやすいなって気に入っています」(陽生くん)
ダイニングテーブルではなく、リビングテーブルを勉強机にする理由
多くの家庭ではダイニングテーブルでリビング学習をするケースが多い中、なぜ別に専用の机を置いたのでしょうか。
「ダイニングテーブルはあるんですけど、食事前に片付けないといけないし、食事が終わったらすぐ作業に取り掛かれるように、という狙いもありますね」(治幸さん)
「小さいときにパンケーキをよくつくっていて。濡れ布巾を敷いてフライパンをジューってするんですけど、その時にダイニングテーブルがデコボコになっちゃって。勉強には向いていないかなってことで」(陽生くん)

窓に向かって配置された「研究室」の机。「ここが集中できる」と陽生くん
親が付き添わない「自走学習」
陽生くんは小6にして、学習を完全に自走しているというから驚きです。
「彼が勉強しているときは、僕は家事したり、机に座って日記書いたり、本読んだりしてますかね。息子の方が数学とか上ですし」(治幸さん)
「うーん、宿題は一人の方がしやすい時もあるんですけど、数検(実用数学技能検定)の勉強とか、ちょっと難しくなってくると、お父さんがいた方が心強いかなって思います。どっちかっていうとお父さんの勉強にもなるから、一緒にやったら楽しいし」(陽生くん)
そう笑いながら話す陽生くんの言葉に、親子の信頼関係が垣間見えます。
壁に広がる学びの歴史、名付けて「賢者の壁」
リビングの壁には、世界地図、宇宙関連の資料、数学の公式などがびっしりと貼られています。大森家ではこの壁を「賢者の壁」と呼んでいるそう。
「壁にいろいろ貼ってあると、なんか、こんなことも勉強したな〜って。見ているだけで楽しくなるので」(陽生くん)
陽生くんにとって、賢者の壁は自分の学びの歴史を可視化する大切な場所になっています。
「昔から貼ってあるやつも結構ありますね。最初はピンで留めてたんですけど、今はひっつき虫っていうシールがあるんで、壁を傷つけずに貼れるようになりました」(治幸さん)
当初、陽生くんのお母さんは壁に貼ることに反対だったそうですが、治幸さんの「1年、2年のことだから」という言葉で説得。結局、小学6年生になった今も続いています(そして今後も……)。

リビングには、新聞の切り抜きなど、陽生くんの活躍の記録が

玄関の飾り棚にも思い出コーナーが!ディスプレイするのが、親子の楽しみだとか
家族で共有する本棚と、ローテーブルでのオープン収納

家族で共有する本棚。下3段には、陽生くんの好きな本がぎっしり詰まっています
リビングには5段の本棚があり、上2段は母の本、下3段が陽生くんのスペースです。以前は父の本も入っていたそうですが……。
「最初は、妻2段、僕2段、息子1段だったんですけど、だんだん減っていきまして、僕のスペースは消失しました(笑)」と治幸さん。
治幸さんの本は今、2階の廊下に置かれているそうです。
「本はどんどん増えていきますね。減らないです」と陽生くん。
最近は小説も読み始め、ボカロ曲を小説化したものや、QuizKnockとコラボした『君のクイズ』(小川哲著)などを楽しんでいるそう。
一方、以前使っていたテーブルは、現在ボードゲーム置き場に。
「音速飯店」、「コンプレット」……カラフルなゲームのほか、将棋用の対局時計などが所狭しと並びます。
「ボードゲームがいつでもできるし、見ていてカラフルだし、ワクワクします。リビングはもうそんなにモノを置くスペースがないから、机に置くという形で収納してるつもりです」(陽生くん)
しまい込んでしまうと忘れてしまうので、出しておく方が好きなのだそう。
治幸さんも「まあ、これも一応、収納、してますよね」と笑います。見た目より、「日々使うこと」を優先した大森家ならではの収納スタイルです。

家族で麻雀をしたり、友達を呼んでボードゲームやカードゲームをしたり。楽しみが詰まったテーブル
スマホを見ない暮らしが生む、親子の時間
大森家の特徴的なライフスタイルの一つが、スマホをほとんど見ないこと。
「お父さんも、リビングではスマホを使っていませんね。うちのスマホは通信用ではなくて、音楽を聴く、とかそういう使い方がメイン。同級生で持っている子もけっこういますけど、僕は持ってないです」(陽生くん)
テレビも流しっぱなしにせず、見たい番組だけを録画して見るスタイルです。
そのかわりに、家では何をして過ごしているのでしょうか。
「一緒に将棋したり、ボードゲームをしていますね。これが楽しい。家族3人で麻雀をやることもあります」(治幸さん)
「本もよく読みます。お父さんもお母さんもよく本を読んでいるので、なんか楽しそうだなって思って、読書が好きになりました」(陽生くん)

将棋盤。対局時計を使って、本格的に取り組んでいます
片づけよりも大切にしているもの
「片づけは上手ですか?」という質問に、陽生くんは治幸さんと顔を見合わせて笑い、2人で「ノー!」。
「けっこう、出しっぱなしが多いです(笑)。鉛筆、消しゴムとか、机の上に出ていることが多いですね。僕にとっては、それが便利というか。使いたいとき、すぐに使えるので」(陽生くん)
治幸さんも、これまで陽生くんがつくった工作物をほとんど手放していないと言います。
「僕自身がこどものころ描いた世界地図なんかを、両親が保存しているんですよ。それを息子に見せたらけっこう喜んでくれて。取っておくことも大事かな、と。収納的にはダメなんでしょうけど、すいません(笑)。リビングは、息子が探し物をしなくて済むことを優先していますね。多少散らかっていても、必要なモノにすぐ手が届いて、パッと集中して取り組むことができる。それが彼にとっては大事なのかな、と思っています」(治幸さん)

陽生くんがつくったモーターカー。電池を4個にして、パワフルに改造した思い出の一品
家族がいる場所で育つ自走力
陽生くんもそろそろ中学生。そろそろ一人の部屋にこもりたいな、と思うこともあるのでしょうか?
「まだそういうのはないですね。中学に入ったら、ちょっと気持ちが変わるのかな? う〜ん、今は、家族がいる空間で勉強できるのが、幸せですね」(陽生くん)
将来の夢は宇宙飛行士。そしていつか「全自動麻雀卓を買うこと」が目標だという陽生くん。「研究室」と好きなものがたくさんあるリビングで過ごす時間が長いぶん、自然にキッチンに立って料理をつくることもあると言います。
大切なのは、こどもが安心して「好き」を追求できる環境と、スマホを置いてそっと見守る親の眼差し。リビングの真ん中に置かれた「研究室」は、効率的な学習スペースというだけでなく、家族が共に過ごす時間の豊かさそのものを教えてくれているようでした。
今日も陽生くんは、大好きな家族の気配を感じながら、リビングの特等席で自分の「好き」に夢中になっています。

大森家の大切なペット、文鳥のピッピは9歳
『みるみる自走する! 子育てはリアクションが9割』(新潮社)
『みるみる自走する! 子育てはリアクションが9割』(新潮社)は、塾なし・独学で数検準1級などを取得した小6の息子と、元新聞記者の父による共著。本書が提案するのは「ほめる・叱る」の代わりに親が全力で「おもしろがる」アプローチ。「勉強しなさい」と言わずに子どもの知的好奇心と圧倒的な「自走力」を引き出す秘訣を、今日から真似できる具体的なやり取りを交えて全公開。焦る親の心を軽くする画期的な一冊。
https://www.shinchosha.co.jp/book/356931/