こんにちは、ひまわり工房暮らしの設計士、東沙織です。「モジュールの基礎」がテーマのエッセイコラム。たくさんの方にご覧いただけていて嬉しいです。今回はキッチン収納がテーマです。ぜひ、お茶を片手に頭をほぐしつつ、このエッセイコラムを読み進めていただければ嬉しいです。

東沙織

東沙織

1988年生まれ、兵庫県相生市出身。有限会社ひまわり工房取締役 暮らしの設計士。 設計思想は、『家事シェアできる家』・『らくちん動線の家』。適材適所の収納計画も定評あり。毎朝アイデア発信するインスタグラマー。

家具やモノを長く大切に使うために。知っておきたいモジュールのこと

収納家具や、作り付けの収納にはモジュールという概念が組み込まれています。
深く理解することで、そこにしまうべきアイテムや、避けるべきアイテムがわかってくる。また、新たに家具を新調する際に「何をしまいたいのか→どういう家具を選べばいいのか」という視点で選ぶと、長く使えて愛せるアイテムを選び取ることができるようになります。このコラムが、その一助となれば幸いです。

アイランドキッチンやカウンターキッチンなど、家を新築する方やリノベーションを考えている方には選択肢が多いものです。キッチンの理想を考える場合、「モジュール×収納」をヒントに考えてみませんか?

キッチンのシンク下にたくさん収納スペースが欲しいです。キッチン下収納にモジュール的な決まりはありますか?

まずは、キッチンの定番サイズのお話をします。
一般的には「I型キッチン」といわれるキッチン形状が普及していますね。そのほかにもL型キッチンや二列型キッチンなどもありますが、今回はI型キッチンを参考にして話を進めていきます。

I型キッチンの事例

実はキッチンにも、定型サイズは存在しています。
定型サイズ幅は以下の通りです。
165cm/180cm/195cm/210cm/225cm/240cm/255cm/260cn/270cm/285cm/300cm
これらのサイズは「尺モジュール(約91cmモジュール)」におさまりやすいように、キッチン本体および付属する引き出しサイズが配慮されています。キッチンメーカーの思慮深さが伺い知れますね。

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ちなみに、キッチン本体の奥行きは60cmや65cmが定番ですが、最近はアイランドキッチンやカウンターキッチンという「キッチン本体の奥行きがよりいっそう広い」ものとして、奥行き90cmを超えるものも登場しています。

また、キッチンの定型サイズ幅に寄り添うように、キッチンの付属設備の定型サイズも概ね決まっています。

例として、I型240cm幅のキッチンを事例にまとめてみました。
・シンク幅:約65~95cm(シンク下収納の幅:90cm)
・コンロ幅:60cm(コンロ下収納の幅:75cm)
・食器洗機幅:45cm(食器洗機横の収納幅:30cm)

Q2キッチン下収納と、背面収納ってどちらも取り入れるべき?

まずは回答の前に、わたしから1つ質問させてください。
「キッチンでは、何人の方が同時に作業することを想定しますか?」
・基本的に、1人
・2人で作業することが多い
・2世帯暮らしなので、大人3人以上がキッチンの作業場にいることが日常
など、ご家族によって事情は様々あるものです。2人以上が同時でキッチン空間を動き回るご家庭では、通路をゆったり計画することも選択肢です。キッチンと背面収納との通路幅は、通常110cm程度空いていれば、通行しつつ作業もしやすいです。
その通路を確保した上で、まだスペースがあれば背面収納を取り入れることが選択肢に上がってきますし、スペースが足りないようであればキッチン下に収納をまとめることをオススメします。

・1人であれば、規定サイズで問題なし。
・2人であれば、すれ違えるくらいのスケールが欲しい。
後者の「常時2人以上で使う場合」は、通路は110cmよりもあと10cm程度の余裕を作るのもいいですね。背面収納を作る場合は、奥行きを浅めのもの(例:45cm未満)にする工夫もできます。

「キッチン下収納or背面収納」このどちらかに偏って収納をしてしまうことで、かえって使いにくいと感じる人もいます。収納は、できる限り腰を曲げたり踏み台に乗ってモノを取り出さなくてもいい高さにモノを収納できるのが理想的です。
ですので、結論としては、生活スタイルが確立してない方や柔軟に変えていきたい方は、できればバランスよく「キッチン下収納+背面収納」を計画されるのがいいですね。

補足ですがここ最近、キッチンのシンク下を「あえて空間まるごと開けて、ゴミ箱置き場にする事例」も増えています。ゴミ箱を使いやすい位置におくことに加えて、ゴミ箱の存在が視界から消えて空間全体がスッキリするのが特徴です。ただしこれには向き不向きがあります。→キッチンのシンク下に食器や調理器具を収納しなくても大丈夫!と言える方にオススメします。(笑)

キッチン下空間をゴミ箱置き場にした事例

Q3大容量の背面収納に憧れるけど、どうやって活用すればいいですか?』

造作による、大容量のキッチン背面収納

写真のような大容量の背面収納を作る時、想定しておくと良いモノのサイズや場所があります。
・冷蔵庫、電子レンジ、トースター、ホットプレート、自動調理器など家電品
・毎日仕様の食器、使用頻度の低い食器
・炊飯器のサイズと最適な使用高さ

「背面収納」というのは、文字通り背面に収納をつくるというもの。キッチン作業中は、どうしてもキッチン動作として「1アクション=振り返って使う」という動きが必要です。
あまり背面収納ばかりを充実させても、高所や低所の収納は出し入れが大変です。
「じぶんたちが使いやすい高さ」をメインにして、キッチン本体側と背面収納側、各々の収納をバランス良く充実させると良いですね!

もちろん、壁面収納が充実すると、その分、キッチン本体側には空間の余裕が生まれるので、下部には食器洗機などを入れて設備を充実させることもできます。ライフスタイルによって優先順位は変わりますので、偏って考えすぎずバランスを大切にしましょう。

Q4キッチン収納にオススメの収納アイテムがあれば教えてください!

ポリプロピレンケースで調理道具を収納した事例 写真提供 @ ouchi____zさん

やはり、汎用性のある小物収納を使って収納するのはいいですね。もし、将来的に収納したいモノの内容や量が変わってしまっても、その都度、柔軟に小物収納をカスタマイズできるのが嬉しいですよね。

わたしのオススメと言ったらおこがましいですが、キッチンメーカー独自の収納アイテムも、シンデレラフィットにキャビネットへ収まるため使いやすいです。
例えばキッチンメーカーの「LIXIL」が販売している「スライドストッカー(アシストポケット付き)」というお品。これはキッチン引き出し特有の…コンロやシンク下のデッドスペースを上手く使うことに役立ちます。収納戸を引き出す行為と共に、上網かごが同時に引き出されるので、一目で引き出し内全体が見渡せて取り出しやすいです。
もちろん、他のキッチンメーカーにも類似品は存在しています。キッチンメーカーが独自で製造しているお品も日進月歩の改良が重ねられているので選択の1つとしていいのではないでしょうか。
持ち物と収納のバランスは、各家庭で様々です。人とちがう選択もまた賢明な選択です。
焦らずじっくり考えてみましょう。

LIXIL製 スライドストッカー(アシストポケット付き)を使用した事例 写真提供 @miiipanmanさん)

今回のエッセイコラムは いかがでしたでしょうか。

ぜひ、ご自宅のキッチンを新築やリフォーム・リノベーションされることがあれば、空間を有効活用できるよう「幅や奥行き+人同士の動作」にも配慮されてみてください。 また、建築と同時にしかできない選択なのか、生活の中で柔軟に選択できるものなのか、というところも冷静に判断材料として見つめてみると、よりよい選択ができそうですね!

「もっとほかにもたくさんのアイデアが知りたい!」という方がいましたら…
今回のような暮らしづくり&家づくりのアイデアは主Instagram(@himawari_kobo)やブログ(azumasaori.com)に掲載しています。手前味噌ですが、今や全国で共感の嵐が湧き、2021年2月現在は4万人を超えるファンの皆さんに関連するSNSをフォローして見守っていただけるまでになりました。よろしければ、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

今回のアイデアはここまで。
お届けいたしましたのは、暮らしの設計士「あず」こと東沙織でした。
ではまた、次のエッセイコラムでもお会いしましょう。

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