家を建てるときやリノベを考える際、あたたかみや肌触りのよさに惹かれて無垢材のフローリングを検討する人は多いですよね。お手入れに手間がかかるイメージがありますが、実際のところは? 無垢フローリングの特徴やメンテナンスについて、自然を生かした木材製品の商品開発や製造、販売を手掛ける「小川耕太郎∞百合子社」の代表取締役・小川百合子さんに話を伺いました。

HOUSTO 編集部

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そもそも無垢材とは? 一層材、三層材の違いを知る

無垢材そのものにいくつか種類があります。

天然の一枚板で作られた一層材

天然の一枚板でつくられているものは一層材。無塗装か自然塗料仕上げなら呼吸し続けるので、調湿機能を持つのが特徴です。

一層材の断面

板を交互に三枚貼り合わせた三層材

少しずつ割合が増えてきているのが三層材という床材です。
これは、板を交互に三枚貼り合わせた床材。一層材に比べて湿度による収縮や膨張が起きにくいという特徴があります。
無垢材の明確な定義はなく、現在は一層材と三層材を無垢材として扱うケースが多いです。

三層材は水に注意。メンテナンス次第で長持ちする!

三層材は板の貼りつけに接着剤を使っているぶん、水に弱いという性質があります。無垢材は水厳禁というイメージがあると思いますが、実を言うと少し違っていて、木というより接着剤が水に弱いのです。水が染み込むと接着剤がゆるみ、木が膨張してしまいます。最悪の場合、板が剥がれてきてしまうことも。
ただし三層材でも自然塗料仕上げが施されていたり、入居前に蜜ロウワックスを塗り込んでおいたりすれば、普段のメンテナンス方法は一層材とほぼ同じ。一層材は無塗装でも大丈夫ですが、水や汚れのしみが残ってしまうことも。一層材も自然塗料仕上げをした方が長持ちします。

無垢材は経年変化を楽しむもの。神経質な人には不向きかも?

無垢材は、その名の通り天然の木をそのまま(無垢)の状態で加工したもの。自然の産物なので、当然変化していきます。時を追うごとに深みが出てくるところも大きな特徴。
特に小さなこどもやペットがいると、どうしても汚れてしまうものです。神経質になってきれいな状態を保とうとするより、傷や汚れを味としてある程度受け入れる寛容さが必要かもしれません。

無垢材フローリングのお手入れ方法

ではここから、自然塗料仕上げの無垢フローリングの基本的なお手入れの方法をご紹介します。

水こぼしや汚れを放置しないことが基本。無垢材に使えるクリーナーがあれば安心

水こぼしや食べこぼしなどは、固く絞った雑巾ですぐ拭き取るのが基本です。自然塗料仕上げを施した無垢材は、ウレタン塗料(木の表面に被膜を形成する耐水性の高い化学塗料)仕上げと比べると多少のお手入れは必要ですが、ひどいシミはできにくいはず。無塗装の無垢フローリングなら、入居前に蜜ロウワックスを塗っておくことでそれに近い状態になります。
万が一、水こぼしの跡やクレヨンなど色のついた跡が残ってしまった場合は、雑巾で拭き取った後に、無垢材に使えるクリーナーをシュッと吹きつけて布で拭き取りましょう。

この時使用するクリーナーは、「無垢材に使える」と表示されているものを選び、成分をよく確認することが大切です。

無垢材のお手入れには向いていない成分

アルコール…アルコール除菌をすると床材が変色したり、毛羽立つ場合があります。
重曹…無垢材の掃除に使うと黒く変色してしまうため、注意が必要です。

また化学物質過敏症や喘息、アトピー性皮膚炎が心配な人、小さいこどもやペットがいる家庭は化学薬剤や揮発性物質にも気を配りたいところです。

無垢材におすすめのクリーナー

植物由来のオイルや蜜ロウなど自然素材でつくられていると安心かつ、床材の保護もできます。油分は無垢材のメンテナンスに必須。自然塗装や蜜ロウワックスを塗った無垢材でも、拭き掃除のたびに塗膜は摩耗して薄くなり木の油分が失われていきます。現代の家は高機密であることが多く、エアコンの使用などによる乾燥でもともと木の油分が抜けやすい環境。自然素材の油分が含まれたクリーナーを使うことで、塗膜の摩耗とパサつきを補ってあげるとよいでしょう。

小川耕太郎∞百合子社の「蜜ロウミストデワックス」の原料はエゴマ油、無漂白の蜜ロウ、アルカリイオン水のみ。用途(普段の掃除、強めの汚れ落としなど)に合わせて水道水で4〜20倍に希釈して使用します

クリーナーを使ってもシミや汚れが取れない場合は?

クリーナーを使ってもシミや汚れが取れない場合には、耐水サンドペーパーを組み合わせると効果的です。クリーナーを吹きつけ、サンドペーパーを軽く滑らせます。木の表面を削るのではなく、表面についた汚れをゆるめるだけなので優しくこすりましょう。汚れが浮き上がってきたら、布で拭き取ります。仕上げに蜜ロウワックスを塗り込んでおけば表面を保護でき、防水・防汚効果も高まります。

蜜ロウワックスの塗布はスポンジなどを使えば簡単

サンドペーパーの番数は、木の種類にもよりますが中目〜細目タイプを使うのがおすすめです(ヒノキ、スギ・パイン、マツなどは360番。タモ、桜、ウォールナットなどの広葉樹は600番)。サンドペーパーの代わりに目の細かい布(マイクロファイバーやジーンズの古布など)で落ちる場合もあります。また希釈して使うタイプのクリーナーの場合は水よりお湯で希釈するほうが、汚れが落ちやすくなります。

無垢フローリングを長持ちさせる3つのコツ

愛着を持ってお手入れすれば、経年変化で出る味わいを楽しめる無垢フローリング。長持ちさせるコツを教えていただきました。

植木やペットゲージなど、床にモノを直置きしない

無垢材は自ら調湿することで心地よさを提供してくれますが、だからこそ湿気がこもるとカビが生えてしまうことも。マットは床に置きっぱなしにせず、定期的に移動させるのがおすすめです。植木鉢は床との間に通風を確保しましょう。
ペットゲージも要注意。ゲージの下に布を敷くと湿気がこもってしまうため、キソパッキン(ホームセンターなどで手に入る床下換気用部材)をはさんで床とゲージの間に空気の通り道をつくるとよいでしょう。新築・リノベの場合はゲージの場所をあらかじめ無垢材から別素材に変えて設計してもらうのも一つの方法です。

石油ストーブなど、金属との接着を避ける

空き缶や鉄鍋を無垢フローリングに置きっぱなしにすると、成分が化学反応を起こし変色してしまいます。石油ストーブも要注意。フレームが床に接着しないような置き方を意識しましょう。

床拭きロボットは掃除パッドにクリーナーを吹きかけて起動

床拭き専用や、水拭きもできるロボット掃除機など今はさまざまな機種が販売されています。しかし、全般的にロボットから噴射される水の量が、無垢材に対しては多いことも。蜜ロウワックスを塗布したフローリングでない場合は水シミができる可能性があります。乾拭き可能な機種の場合は、タンクに水入れず無垢材に使えるクリーナーをフローリングや掃除パッドに吹きかけて起動してみましょう。上記紹介の「蜜ロウミストデワックス」の場合は10倍希釈。乾拭きできない機種なら、タンクに水を入れ、無垢材に使えるクリーナー(「蜜ロウミストデワックス」の場合は2倍希釈)を掃除パッドに吹きかけてください。どちらの場合も、掃除パッドが湿るくらい吹きかけて使うと床はかなりきれいになります。

また、箒にクリーナーを直接吹きかけるのもおすすめの掃除方法。ホコリが散りにくく、掃き掃除で無垢材の保護も同時にできて一石二鳥です。

無垢材を扱い慣れた工務店に相談し、理想の無垢材フローリングを実現させよう

無垢フローリングを選ぶなら、無垢材の家づくりに慣れた建築士や工務店に依頼することも重要。ライフスタイルや予算、また家族構成によって、フィットする無垢材はどんな種類かは変わってきます。無垢材の性質を理解し、自分たちが大切にしたいことをきちんと考慮してくれるところを選ぶのがおすすめです。最近では主要構造部(柱や梁)および内装材(フローリングなど)に県産材・地域材を使うことで補助金が出る場合も。国や自治体の情報を定期的にチェックしてみるとよいかもしれません。
使用する無垢材が決定したら、クリーナーのサンプルを取り寄せたり、お試しサイズの商品をまず使ってみたりしながら、ぴったりのお手入れ方法を探してみましょう。

フローリングお手入れまとめ

いかがでしたか? 手をかけながら長く愛用できるのが、無垢フローリングの魅力。コツさえ掴めば、メンテナンスに大きな手間がかかることもなさそうです。無垢フローリング検討中の人は、ぜひ参考にしてみてください。

今回教えてもらったのは……

  • 小川孝太郎∞百合子社
    小川百合子さん
    小川耕太郎∞百合子社」の代表取締役。便利で使い捨ての商品を提供するのでなく、持続可能な循環社会を実現するための商品を開発、製造、販売。使い込むほど深みを増す無垢材の魅力を広めるため、使い方サポートにも尽力。木と長く付き合う楽しさを伝えている。

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