「片づける前に収納アイテムを買うのはやめましょう」と幾度となく言い続けている、整理収納アドバイザーの水谷妙子さん。それでもつい買ってしまう、買いたくなるという人に向け、整理収納の本質について改めてお話しいただきました。
よく考えずに買った収納ボックス。勉強代と割り切れる?
この連載で何度もお話ししている通り、片づけたいからといってまず収納ボックスを買いに行くのはNGです。
何をどのくらい、どこに入れるかを考えて、さらに適材適所のボックスを選ぶという流れがおすすめです。こちらで紹介したようにボックスを選ぶ前には、空き箱や紙袋を使って収納のシミュレーションをしてみるとよいですね。これらをしっかり守れば、「使いづらい」「しっくりこない」といった失敗はかなり減ると思います。
もし、この手順を踏まずに収納ボックスを買ってしまったら? 引き出しの中なのにフタつきボックスにものを入れてしまい、毎回フタを開けるのを面倒に感じたり、フタつきボックスを重ねてしまい、下の段に入れたものが取り出しにくくなっていたり…。
使いづらさを感じて、そのボックスは結局フリマアプリなどで売って手放すか、家のどこかで眠らせるか、ゴミとして処分するか。どれを選んでもあまりいいことはありませんよね。
勉強代と思って次に生かそうと思うならまだ救いがあります。もっと深刻なのは「失敗した」「お金を無駄にした」ということを認めたくなくて、そのまま使い続けてしまうこと。失敗していることにすら気づかないケースもあるかもしれません。
使いにくいまま使い続けても暮らしの質は上がらず、ストレスがたまるだけではないでしょうか。
整理収納について考えるのは、時間も手間もかかります。忙しくてそんなことを考える時間はないと思うかもしれません。何も考えずにただボックスを買いそろえて中身を詰め、ものを隠すより、管理しやすい数や使いやすい置き場所をしっかり検討したうえでアイテムを選び、収納する。遠回りのように見えても、結局はこれが暮らしがラクになる一番の近道です。そして、かけるお金も最小限ですみます。
収納は、シミュレーション→実践→改善の繰り返し
もう1点、大事なことは「収納に完成形はない」ということ。セオリー通りに整理収納を行い、暮らしが整ったとしても、それはゴールではありません。暮らし方や考え方は時間とともに変わっていくからです。暮らしが変わると、持つものや数が変わります。それに合う収納も当然変わります。
だから、言うなれば収納はいつも(仮)の状態。私自身も、収納に使いづらさを感じたらその都度見直しています。こどもの成長などでライフスタイルに変化が起きたら、また見直し。シミュレーションして実践し、改善することを繰り返しています。
これは家具についても同じことが言えます。いきなり買わず、手持ちのものでまずなんとかやってみる。不便を感じなければそのまま使えばいいし、結局買うことになったとしても、事前にシミュレーションしておくことで「もっと大きいほうがいい」「あと5cm低いほうがいい」など具体的な要望が出てくるものです。
わが家では先日小学6年生の娘の部屋をつくりましたが、学習机は新調していません。すでに家にあったコンソールテーブルで代用し、使い勝手をシミュレーション中。しばらく使ってみて、どうするか検討するつもりです。
収納はボックスをきれいに並べ、写真を撮ったらうれしくなってそれだけで満足してしまいがち。でもそこがゴールではありません。もっと柔軟な気持ちで収納と向き合ってみてほしいと思います。