コロナ前は、何度も子連れで出かけたヨーロッパ。この春、5年ぶりに訪れることができました。5年分、私も息子も年齢を重ねたこともあって、旅先への荷物の内容もずいぶんと様変わりしました。遠くへ旅に出ると、必要なモノ、不要なモノがいろいろとわかってくるものです。

ライター・山野井

ライター・山野井

思春期まっただ中の10代男子と、天然な夫との3人家族。鎌倉の小さな家で、インコとワンコと共に暮らしています。趣味は旅と料理、マイペースでフランス語を勉強中。

パッキングは当日に

息子が生まれてから、ほぼ毎年海外へ出かけています。
「経験をさせたい」とかそういうことではなく、単に私が行きたかったのです。母国とは異なる文化に接して、こどもがどんな反応をするのか、見たいという好奇心もありました。

一番多く訪れたのはフランスです。南仏とパリに住む友人の家を拠点にして、バルセロナ、ロンドンなど、さまざまな街へ。子連れ旅は、思い出をよりいっそう濃厚なものにしてくれます。一つひとつの旅が、私の宝物になりました。

最後にヨーロッパを訪れたのは2019年の春。2020年の3月にもエアチケットを予約していましたが、コロナ禍でキャンセルを余儀なくされました。

そしてようやく、久しぶりの渡欧です。
この春は、受験を終えた息子のリクエストで、ローマを旅先に決めました。息子には『ジョジョの奇妙な冒険』という漫画の影響で、舞台を巡ってみたいという希望があったのです。私にとっては、三度目のローマ。実に11年ぶりでした。

フランスの友人たちにも会いたいと、パリにも寄ることに。友人宅でのステイは居心地よく、また、ユーロ高の今、本当に助かりました。

フライトは夜便。ギリギリまでパッキングもせず、息子が小学校から戻ってくるとようやく詰めはじめるという呑気さでした。
いや、本音を言えば…呑気というよりも、宿題を最後まで残しているような気分でした。
とにかく腰が重くて「ああ、面倒くさい…洋服は何にする?下着は何着?」とか、考えたくない!と逃げたくなっていたのです。

そうです。すべては加齢のせいです。
数年の間、ヨーロッパへいかないうちに歳を重ねた私は、すっかり詰め不精になっていました。

しかし、刻一刻と空港へ向かう時間が近づいてきます。
ずるずるとこたつから這い出ると、一気にパッキングを片付けました。

詰めている間に、気づいたことがあります。

「あれ? こんなに荷物って少なくてよかったんだっけ?」

最悪、パスポートとクレジットカードがあればいい

洋服の変化があまりないので、アクセサリーは複数持っていくようにしています。100均の小袋に分けて入れると、かさばらずにすみました。時計は都市時間がわかりやすいG-SHOCK。

現地にいるのは8日間。洋服は3パターンくらい、友人宅で洗濯をさせてもらうと考えて、下着も3日分。基礎化粧品もサンプルを少し持ち、化粧ももうほとんどしないので、コンシーラーとアイブロウ、チーク、マスカラを一本。あとは、友人宅へ運ぶお土産くらいです。
スーツケースの半分は空っぽのままでした。息子も小さなキャリーケースを持たせましたが、入れたのはほぼ着替えだけ。

ロキソニンテープは、機内で肩が凝ったときに便利です。念のため、カイロも持ちました。
もち麦満腹バーは、非常食に。トランジット中に小腹がすいたときや、旅行中、小麦に飽きたときに、重宝しました。

歯ブラシ、ガム、薬類は機内に持ち込むリュックの中へ。
歯ブラシはエアラインによっては配布されますが、大事なのはコップです。
機内のトイレは誰かに待たれるのが嫌なので、歯磨きは、できれば空港で済ませたい。そのために私はいつもプラスチックのコップを持っていくようにしています。

そして旅に絶対欠かせないのは、常備薬です。
最近友達に勧められた万能薬、小田原の「透頂香ういろう」をお守りがわりに持ちました。

中身は仁丹みたいです。

という感じで、これら軽い荷物を持って、空港へ向かいました。

お土産は思い出だけで十分

帰りのスーツケースも、ガランとしたものでした。
フランスとイタリアで食材を少し買い、結局またスーツケースは半分空っぽ。
行く前に、周囲の人たちに「ユーロ高だからお土産は配りません、ごめんなさい」と宣言していったので、バラマキ土産の類もなし。
ローマの最後のホテルでは、下着類にもさようなら。
帰国してからの荷解きは速攻で終わりました。

思えば、20代の海外旅行では、たくさんブランドものを買いました。
30代になると、お洒落な生活雑貨を買いあさりました。
40代では、友達へのお土産に加え、食材、ワインなど、重いものをたくさん買いました。
今回の旅では、ブックショップで版画を一枚と、ボンマルシェで香水のコフレ、食材を少しだけ。

今後、さらに歳を重ねたら、きっと何も買わない旅になるでしょう。
おいしいものは現地で食べて、撮った写真を眺めるだけで、いい旅になる。「お土産は、思い出だけで十分」と考えるようになった今、少し大人になったなあ、と思っています。

それにしても、大きくなった息子は、ずいぶん頼もしい旅の相棒になりました。
荷物は積極的に持ち、トランジットのゲートも探し、時間になったら移動を促してくれました。

しかし、デューティーフリーの高級ショップに目がギラギラ。「オレもいつかこんな高級なバッグを買ってみたい」などと興味津々な様子。いよいよ物欲にまみれるステージに入っていく若い息子と、物欲のステージから降り去った初老の私との旅は、これからちぐはぐなものになりそうです。

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