就学前や小学校低学年は、創作物の持ち帰りが一番増える時期。かさばる工作グッズや場所をとる「作品」たちとどう向き合うべきなのでしょうか。リビングの一角にキッズコーナーを設け、こどもの作業スペースにも工夫をしているというデザイナーの板井亜沙美さんにお話を伺いました。

HOUSTO 編集部

HOUSTO 編集部

HOUSTO公式アカウントです。当サイト独自の目線で、毎日の暮らしがちょっと豊かになる情報を定期的にお届け中です!

https://www.instagram.com/ouchinoshunou/

今回教えてくれたのは…板井亜沙美さん

プロフィール
グラフィックデザイナー・イラストレーター。WEBディレクターの夫と、長女(5)の3人家族。東京都内、築43年の中古マンション(約85平米)を部分リノベーションし、2020年から居住。家具づくりが得意な実父にオリジナル家具をオーダーしたり、夫婦でDIYをするなど、少しずつ手を加えながら独自のインテリアを実現させている。
https://www.instagram.com/tgwasm1116

リビングの一角に設えた長女専用「作業机」

レトロな雰囲気が各所に残るヴィンテージマンションに、こだわりの家具とDIY……。初めて訪れた人もついリラックスしてしまう板井さんの素敵な住まいは、インスタグラムでも話題です。

日当たりがいいリビングの角に、白い小さなデスクがありました。これは、板井亜沙美さんの一人娘、5歳のIちゃん専用の「作業机」です。もともとは、あえてキッズスペースを用意するつもりはなかったという板井さん。おもちゃのキッチンがあった場所にこの机を造作したのは、昨年の秋でした。

「娘に『工作ブーム』がやってきまして。絵を描いたり、何か立体的なモノをつくったり……とにかく工作をしているときは集中するんです。自分のスペースをほしがるようになってもいたので、家具づくりが得意な父にオーダーしてつくってもらいました。時間があると、ほとんどここで過ごしていますね」

作業机は、使い勝手はもちろん、大人も心地よく過ごせるインテリアになじむようにとオーダー。お揃いのチェアも板井さんがデザインし、お父さんが製作したもの。板井さん宅の家具の多くが、こうした親子の合作です。

机に備えたキャンバス地の引き出しは、もともとは洗面所で使っていたチェストの再利用。こどもにとっては、木製の引き出しよりも軽くて開けやすく、便利です。

たくさんの色鉛筆は、机の上に。道具の置き場所を決めておくのも大切な学びです。

制作物や工作用具は造作ベンチ下の収納へ。アーカイブする気持ちがポイント

腰高窓だった造りを見て、ご主人が「ここをベンチにしたら気持ちいいんじゃない?」と提案。
ベンチと棚を板井さんのお父さんにつくってもらい、はじめはベンチ下におもちゃをカゴ収納をしていたそう。後日、さらにベンチ下にキャスターつきの引き出しを追加するリメイクを施しました。Iちゃんの工作や、材料(ラップの芯や毛糸など)を仕分けてるスペースとして使われています。

「工作ブームが来る前までは、シルバニアシリーズなど既製のおもちゃでも遊んでいたんですが、今はあまり使わなくなりましたね。それよりも工作の材料をほしがるように。100均で目を輝かせてます(笑)」

容量の大きいベンチ下収納には、ほかにもペーパー類と工作モノと組み合わせて使うおもちゃが入っています。

「既成のおもちゃもすべて処分するのではなく、いったん保管しておきます。しまっている間に、興味が薄れて完全に使わなくなったタイミングで、どうするか考えます」

ベンチ下収納横、奥の木箱には、主に立体作品のアーカイブを入れています。

「保育園からも工作をたくさん持ち帰ってくるんですが、娘にとってはすべてが大切な作品。それらをスペースの問題で手放していくのも心苦しくて。親子でつくることもあるので、私にも思い入れがあります。こうして一時保管場所を作っておくことで、娘も、私たちの気持ちも落ち着くことがわかりました。このアーカイブスペースには、なるべく新しいものを入れると決めて、それが溜まっていくのは娘本人にとっても楽しみなよう。でも、作品も材料も収納いっぱいにたまったら、『いる』『いらない』は本人に決めてもらうようにしています」

まだ使うかもしれない既成のおもちゃは、かごの中にまとめて。ファブリックでさりげなく目隠しをすることで、インテリアにもなじみます。

「優秀作品」は展示やTシャツ化。わが家は小さな美術館

「娘はたくさんの作品を生み出しますが、お互いに『いい出来だね』と思う作品は、ちゃんと額に入れて飾るようにしています。私も幼いころ、父がよく私の作品を額装をしてくれて、うれしかった思い出があるんですが、賞賛され、みんなに見てもらうという体験はこどもの心にいい影響があると思うんです。こうして展示をすると、本人のやる気につながりますね」

もっとも気に入った作品は、こうしてTシャツ化することも!

「『MUSEUM』というアプリがあって、制作した作品を撮影してデータで保存できたり、作品を転写したTシャツなどを注文したりできるので、便利です。わが家では、最優秀作品はTシャツ化。もちろん、審査員は私です(笑)」

この壁掛け棚は、Iちゃんの作業机の隣にあるもの。板井さんのお父さんのDIY作品です。扉部分が額になっているアイデア家具

「つくる」を身近に。三代に受け継がれる創作意欲

板井さんのお父さんは元エンジニアで、現役時代は設計図を描いていたそう。今や家具づくりの腕は玄人はだし。
リビングで一際存在感を放つこのキャビネットも、なんとお父さま作。脚の部分は、碁盤から再利用したものなのだそう。

「キャビネットのサイズは『無印良品』の収納ボックスのモジュールに合わせて欲しいとオーダー。扉のRの角度も細かく指定して。私が設計図を描き、サイズと色味を決めて発注すると、父が材料の効率を考えて設計図を送り返してきます。往復書簡のようで、これが楽しいですね」

扉に採用したのは籐材。見た目もかわいく、通気がよいのが気に入っているそう。保育園の道具やこども服などを整理しています。

「娘は、私が制作したイラストが街でポスターになって飾られているのを目にすると、『ママの絵だ!』とうれしそうにしていますね。両親とも仕事がクリエイティブ系で、じぃじ(板井さんの父)が家具づくりをしている様子もよく見ているので、『つくる』という行為を、自然と身近に感じているのだと思います」

また、板井さんの家の中にはたくさんの雑貨やオブジェが飾られています。この環境も、こどものアート感覚を刺激しているのではないでしょうか。

「休みの日には、娘と一緒に骨董市へ出かけることもあります。アンティークのビーズバッグは、骨董市で娘が選んだもの。お財布がわりに大事に使っています」

自分の目で確かめて、好きなモノを見極める力。必要なモノ、そうでないモノを見分ける力を幼いころから無理なく育てている板井さん家族。クリエイティブな環境で、すくすくと感性を磨いているIちゃんは、どんな大人になるのかな……と、とても楽しみになりました。

あわせて読みたい